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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

無利息無担保の金銭消費貸借は商法第二六五条にいう取引にあたるか。

昭和38年12月6日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、商法第二六五条にいう取引にあたらない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/806/053806_hanrei.pdf

商法二六五条が、取締役が自己又は第三者のためにその会社と取引をなすには取締役会の承認を要する旨規定するのは、会社と取締役個人との間の利害衝突から会社の利益を保護することをその目的とするものであるところ、取締役がその会社に対し無利息、無担保で金員を貸付ける行為は、特段の事情のない限り会社の利益にこそなれ不利益であるとはいえないから、取締役会の承認を要しないものと解するのを相当とする。

本件において、原判決は、第一審判決理由を引用して、上告人が被上告人に対し原判示の(一)ないし(七)の金員を弁済期は貸付の日から一ヶ月以内とする定めで貸付けたこと、右(五)ないし(七)の消費貸借は上告人が被上告会社の取締役に在任中になされたことを確定した上、右消費貸借は被上告会社の取締役会の承諾をえた形跡が認められないから商法二六五条の規定に違反して無効である旨判断している。

しかし、もし右消費貸借がいずれも無利息、無担保の約定であるならば、前述のとおり被上告会社の取締役会の承認を要しないものというべきところ、上告人が原審に於て右趣旨の主張をしているに拘らず右約定の有無について何ら判示することなくして、直ちに右消費貸借は被上告会社の取締役会の承諾をえていないから無効であるとした原判決は、所論のとおり商法二六五条の解釈適用を誤つたものというべく、右違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるといわなければならない。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

よつて、前記(五)ないし(七)の各消費貸借につき無利息、無担保の約定の有無についてさらに審理せしめるため本件を原裁判所に差戻すのを相当と認め、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。