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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

贈与者の第三者あて内容証明郵便が民法五五〇条にいう書面に当たるとされた事例

 昭和60年11月29日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
甲から不動産を取得した乙がこれを丙に贈与した場合において、乙が、司法書士に依頼して、登記簿上の所有名義人である甲に対し、右不動産を丙に譲渡したので甲から直接丙に所有権移転登記をするよう求める旨の内容証明郵便を差し出したなど判示の事情があるときは、右内容証明郵便は、民法五五〇条にいう書面に当たる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/688/052688_hanrei.pdf

 

民法五五〇条が書面によらない贈与を取り消しうるものとした趣旨は、贈与者が軽率に贈与することを予防し、かつ、贈与の意思を明確にすることを期するためであるから、贈与が書面によつてされたといえるためには、贈与の意思表示自体が書面によつていることを必要としないことはもちろん、書面が贈与の当事者間で作成されたこと、又は書面に無償の趣旨の文言が記載されていることも必要とせず、書面に贈与がされたことを確実に看取しうる程度の記載があれば足りるものと解すべきである。

これを本件についてみるに、原審の適法に確定した事実によれば、上告人らの被相続人である亡Dは、昭和四二年四月三日被上告人に岡崎市a町字bc番d宅地一六五・六〇平方メートルを贈与したが、前主であるEからまだ所有権移転登記を経由していなかつたことから、被上告人に対し贈与に基づく所有権移転登記をすることができなかつたため、同日のうちに、司法書士Fに依頼して、右土地を被上告人に譲渡したからEから被上告人に対し直接所有権移転登記をするよう求めたE宛ての内容証明郵便による書面を作成し、これを差し出した、というのであり、右の書面は、単なる第三者に宛てた書面ではなく、贈与の履行を目的として、亡Dに所有権移転登記義務を負うEに対し、中間者である亡Dを省略して直接被上告人に所有権移転登記をすることについて、同意し、かつ、指図した書面であつて、その作成の動機・経緯、方式及び記載文言に照らして考えるならば、贈与者である亡Dの慎重な意思決定に基づいて作成され、かつ、贈与の意思を確実に看取しうる書面というのに欠けるところはなく、民法五五〇条にいう書面に当たるものと解するのが相当である。

論旨は、右と異なる見解に基づき原判決の違法をいうか、又は原審の認定にそわない事実を前提として原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。 

 

The purpose of Article 550 of the Civil Code, which allows for the revocation of gifts not made in writing, is to prevent donors from making gifts rashly and to clarify the intention of the gift. Therefore, in order for a gift to be deemed made in writing, it is not only unnecessary for the expression of intent for the gift itself to be in writing, but it is also not required that the document be created between the parties involved in the gift, or that the document contains wording indicating its gratuitous nature. What is essential is that the document contains enough information to clearly confirm that the gift was made.

In a case where Party B acquires real estate from Party A and then gifts it to Party C, if Party B sends a certified mail to Party A, who is the registered owner on the registry, requesting that the real estate be directly transferred from Party A to Party C through a judicial scrivener, given the circumstances presented, such certified mail corresponds to the written document as mentioned in Article 550 of the Civil Code.

弁護士中山知行