最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

宅地賃貸借契約の法定更新に際し賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う旨の商慣習又は事実たる慣習の存否(消極)

昭和51年10月1日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 宅地賃貸借契約の法定更新に際し、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習又は事実たる慣習は存在しない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/13…

遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,目的物の現物返還請求も価額弁償請求も受けていない場合において,受遺者の提起した弁償すべき額の確定を求める訴えに確認の利益があるか

平成21年12月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において,弁償す…

離婚請求を認容するに際し親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合と監護費用の支払命令

平成元年12月11日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp…

 調停によつて将来にわたり支払うこととされた婚姻費用分担に関する債権を被保全債権とする詐害行為取消権の成否(積極)

昭和46年9月21日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 調停によつて毎月一定額を支払うことと定められた将来の婚姻費用の分担に関する債権は、詐害行為当時いまだその支払期日が到来しない場合であつても、詐害行為取消権の成否を判断するにあたつては、これを…

警察署の塀の上部に上がった行為について建造物侵入罪の成立が認められた事例

平成21年7月13日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 警察署庁舎建物及び中庭への外部からの交通を制限し,みだりに立入りすることを禁止するために設置された高さ約2.4mの本件塀は,建造物侵入罪の客体に当たり,中庭に駐車された捜査車両を確認する目的…

破産債権者が破産宣告の時において期限付又は停止条件付であり破産宣告後に期限が到来し又は停止条件が成就した債務に対応する債権を受働債権とし破産債権を自働債権として相殺をすることの可否

平成17年1月17日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 破産債権者は,破産者に対する債務がその破産宣告の時において期限付又は停止条件付である場合には,特段の事情のない限り,期限の利益又は停止条件不成就の利益を放棄したときだけでなく,破産宣告後に期…

 いわゆる抗告訴訟の対象たる行政庁の公権力行使にあたる行為の要件

昭和39年10月29日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 国または公共団体の行なう行為のうち、それが仮りに違法なものであるとしても、正当な権限を有する機関によつて取り消されまたはその無効が確認されるまでは法律上または事実上有効なものとして取り扱わ…

実質が個人企業と認められる株式会社における取引の効果の帰属

昭和44年2月27日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一、社団法人において、法人格がまつたくの形骸にすぎない場合またはそれが法律の適用を回避するために濫用される場合には、その法人格を否認することができる。二、株式会社の実質がまつたく個人企業と認…

 縁組が無効であるとの主張と離縁無効確認の訴えの利益

昭和62年7月17日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 養子縁組の当事者の一方の提起した離縁無効確認の訴えは、その縁組が無効であるとの主張が認められた場合であつても、訴えの利益を失わない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/198/055198_h…

建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合

平成25年3月26日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主事による建築確認は,当該計画の内容が建築基準関係規定に明示的に定められた要件に適合しないものであるときに,申請書類の記載事項における誤りが明…

 レール上の置石により生じた電車の脱線転覆事故について置石をした者との共同の認識ないし共謀のない者が事故回避措置をとらなかつたことにつき過失責任を負う場合

昭和62年1月22日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 中学生のいたずらによりレール上に置石がされたため生じた電車の脱線転覆事故について、甲が、自らは置石行為をせず、また、置石をした乙と共同の認識ないし共謀がなくても、事故現場において事前に、乙を…

賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例

平成17年12月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには,賃借人が補修費用を負担することになる上記損耗の範囲につき,賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか,賃貸…

買戻特約付売買契約の形式を採りながら目的不動産の占有の移転を伴わない契約の性質

平成18年2月7日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である…

迅速な裁判の保障条項に反する事態が生じた場合の事件処理の方途

昭和47年12月20日最高裁判所大法廷判決 裁判要旨 一 憲法三七条一項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審…

企業者が労働者の雇入れにあたりその思想、信条を調査することの可否

昭和48年12月12日最高裁判所大法廷判決 裁判要旨 一、憲法一四条や一九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。 二、企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることは…

不当景品類及び不当表示防止法の規定にいう一般消費者と公正取引委員会による公正競争規約の認定に対する同法一〇条六項に基づく不服申立の利益

昭和53年3月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 不当景品類及び不当表示防止法一〇条六項にいう「第一項の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的…

恐喝の手段として監禁が行われた場合の罪数関係

平成17年4月14日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/078/050078_hanrei.pdf 弁護人の上告趣意は,判例違反の主張である。 そ…

所有者の異なる数筆の土地に跨つて存在する建物と建物買取請求権

昭和42年9月29日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 借地権者から建物とともに借地権を譲りうけた第三者が、該借地権譲受について賃貸人の承諾のえられぬまま、右建物に増築等の工事を施したときは、判示のような場合を除き、譲受当時の原状に回復したう…

行政処分無効確認訴訟提起後に右処分が取り消された場合と訴の利益

昭和36年4月21日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 行政処分無効確認訴訟は国家賠償請求の目的で提起されたものであるからといつて、処分庁が右処分を取り消した後においても、なおその法律上の利益があるということはできない。 https://www.courts.go.jp/…

執行力のある債務名義の正本を有する債権者が配当要求をした後に不動産競売の申立債権者が追加の手続費用を納付しなかったことを理由に競売手続が取り消された場合における右配当要求による時効中断の効力

平成11年4月27日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 不動産競売手続において執行力のある債務名義の正本を有する債権者がする配当要求は、差押えに準ずるものとして、配当要求に係る債権につき時効中断の効力を生ずる。二 執行力のある債務名義の正本を有…

「罪を行い終つてから間がないとき」および「誰何されて逃走しようとするとき」にあたるとされた事例

昭和42年9月13日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 一、爆発物取締罰則第一条に「人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ」とあるのは、必ずしも、人の身体・財産を害することが爆発物使用の唯一、排他的な動機であることを要求したものではない。二、犯罪…

相手方の陳述した事実に基づいてする訴の変更は請求の基礎に変更がある場合にも許されるか。

昭和39年7月10日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 相手方の陳述した事実に基づいて訴の変更をする場合には、請求の基礎に変更があるときでも、相手方の同意の有無にかかわらず、訴の変更は許されると解すべきである。 二 前項の場合における相手方の陳…

婚姻当事者以外の利害関係人の身分上の地位に及ぼす影響を考慮して婚姻無効確認請求が信義則に反するとはいえないとされた事例

平成8年3月8日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 甲の父が甲の意思に基づかないで甲乙の婚姻の届出をした場合において、甲が右届出がされたことを知らずに丙との婚姻の届出をして二人の子をもうけたため、甲乙の婚姻が無効でないとされると甲丙の婚姻が重婚…

 無罪判決が確定した場合における公訴提起の違法性の有無の判断資料

平成元年6月29日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 無罪判決が確定した場合における公訴提起の違法性の有無の判断は、検察官が公訴提起時に現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料をもつてすべきであり、公訴提起後その…

 損害保険代理店が保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で開設した普通預金口座の預金債権が損害保険会社にではなく損害保険代理店に帰属するとされた事例

平成15年2月21日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 損害保険会社甲の損害保険代理店である乙が,保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で金融機関に「甲代理店乙」名義の普通預金口座を開設したが,甲が乙に金融機関との間での普通預金契約締結の…

共同相続人間の相続分の贈与を原因とする農地の持分移転登記の申請を農地法3条1項の許可を証する書面の添付がないことを理由に却下することの可否

平成13年7月10日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 共同相続人間においてされた相続分の譲渡に伴って生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しない。 2 共同相続人の共有の相続登記がされている農地につき,「相続分の贈与」を原因…

家庭裁判所の捜査機関に対し補充捜査を促し又は求める権限

平成2年10月24日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 家庭裁判所は、事実調査のため、捜査機関に対し、補充捜査を促し、又は少年法一六条の規定に基づいて補充捜査を求めることができる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/110/050110_hanrei.pd…

附記登記による所有権移転請求権保全仮登記の流用と附記登記後の第三者

昭和49年12月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 金銭債権の担保のため債務者所有の不動産に所有権移転請求権保全の仮登記をするのに代えて、他の債権者の債権担保のため所有権移転請求権保全の仮登記が被担保債権の消滅にもかかわらず残存しているのを…

認知者が血縁上の父子関係がないことを理由に認知の無効を主張することの可否

平成26年3月28日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 認知者は,民法786条に規定する利害関係人に当たり,自らした認知の無効を主張することができ,この理は,認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異ならない。 https…

 論評中の他人の著作物の引用紹介に適切を欠く部分があっても全体として正確性を欠くとまではいえないとして右論評に名誉毀損としての違法性があるということはできないとされた事例

平成10年7月17日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 他人の著作物に対する論評中に、右著作物の記述が第三者の談話をそのまま紹介したものではなく著作者自身の認識判断であるかのような適切を欠く引用紹介部分があっても、他の部分を併せて読むならば、右論…