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離婚請求を認容するに際し親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合と監護費用の支払命令

 平成元年12月11日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/756/052756_hanrei.pdf

人事訴訟手続法一五条一項は、裁判上の離婚に際し、子の監護をすべき者その他子の監護につき必要な事項を定めるものとしている民法七七一条、七六六条一項の規定を受け、裁判所が、申立により離婚訴訟の判決で右の事項を定めることができるものとしている。そして、民法の右条項は、子の監護をする父母の一方がその親権者に指定されると否とにかかわらず、父母の他方が子の監護に必要な費用を分担するなどの子の監護に必要な事項を定めることを規定しているものと解すべきである。

したがって、離婚訴訟において、裁判所は、離婚請求を認容するに際し、子を監護する当事者をその親権者に指定すると否とにかかわらず、申立により、子の監護に必要な事項として、離婚後子の監護をする当事者に対する監護費用の支払を他方の当事者に命ずることができるものと解するのが相当である。

原審が、被上告人の本件離婚請求を認容するに際し、被上告人と上告人との間の二男Dの親権者を被上告人と定めるとともに、後記のとおり取り下げられた部分を除き、原判決確定の日(本判決言渡の日)の翌日からDが成年に達するまでの間の養育費の支払を上告人に対して求める被上告人の申立につき、Dの監護費用の支払の申立としてその支払を命じた点に所論の違法はない。

所論引用の判例は、本件と事案を異にする。論旨は採用することができない。

参考

人事訴訟手続法は,廃止されています。: 平成15年7月16日号外 法律第109号〔施行平成一六年四月一日