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民事調停規則6条による民事執行の手続の停止につき第三者が支払保証委託契約を締結する方法によって立てた担保について担保権利者が銀行等に対して支払を請求するに当たり提示すべき債務名義等の相手方

平成11年4月16日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
民事調停規則6条による民事執行の手続の停止につき第三者が支払保証委託契約を締結する方法によって立てた担保について,担保権利者が銀行等に対して支払を請求するに当たり提示すべき債務名義等は,担保提供義務者本人を相手方とするものであることを要する。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/795/062795_hanrei.pdf

一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。

1 訴外D(「D」)は、昭和五八年九月二四日、訴外E保険相互会社(「E」)から一億七〇〇〇万円を借り入れ、自己の所有する土地建物に抵当権を設定した。
  F株式会社(「F」)は、右同日にDと締結した保証委託契約に基づき、Dの右借入金債務を保証した。

2 DがEに対する右借入金債務の弁済を怠ったため、Fは、Eに対して元利金等を支払い、昭和六一年一二月二六日、右抵当権を代位取得した。

3 Fは、東京地方裁判所に対し、前記土地建物について抵当権の実行としての競売の申立てをし、同裁判所は、昭和六二年一月二一日、競売開始決定をした(「本件競売手続」)。Fは、同年三月、被上告人・附帯上告人ら(以下「被上告人ら」という。)に対し、Dに対して有する債権及び抵当権を譲渡した。

4 Dは、昭和六三年一月三〇日、弁護士である上告人・附帯被上告人(「上告人」)を代理人として、東京簡易裁判所に対し、申立人をD、相手方を被上告人らとする債務弁済協定の調停を申し立てるとともに、民事調停規則六条(平成八年最高裁判所規則第六号による改正前のもの)に基づき本件競売手続の停止の申立てをし、担保提供義務者であるDに代わって、上告人が保証委託者として株式会社G銀行(「G銀行」)との間で支払保証委託契約を締結する方法によって担保を立て、同裁判所は、同年二月二日、右調停事件の終了に至るまで本件競売手続を停止する旨の決定をした。

5 Dと被上告人らの間において、平成元年二月二七日、Dが被上告人らに対し、同年三月一六日までに元本及び利息等の内金を支払う旨の調停が成立したが、Dが履行しなかったので、本件競売手続は進行し、平成七年八月二四日に売却許可決定がされ、平成八年五月二九日に至り、配当が実施された。

二 被上告人らの予備的請求は、上告人に対し、Dが執行停止の申立てをしたことに基づき、同人が被上告人らに対してその主張する額の損害賠償債務を負うことの確認を求めるものであり、被上告人らは、G銀行から支払保証に係る金銭の支払を受けるために右確定判決が必要であるから、右請求に係る訴えには確認の利益があると主張する。

  原審は、前記一の事実関係の下において、次のとおり判示して、被上告人らの右請求に係る訴えにつき確認の利益を認め、右請求の一部を認容した。

  旧民訴規則二条の二の定める支払保証委託契約を締結する方法によって担保を立てるについて、第三者が保証委託者として右契約を締結する場合でも、現在の実務では、本来の担保提供義務者(民事執行の手続の停止の申立ての場合はその申立人)が保証委託をする場合と同様式の契約書が用いられ、第三者は「保証委託者(担保提供義務者)」と表示されていることから、担保権利者が銀行等から支払保証に係る金銭の支払を受けるためには、第三者に対して同条一項一号、二項に定める債務名義等を取得すれば足りると解する余地が生じており、本件の契約者であるG銀行もそのように解している。

したがって、被上告人らは、上告人に対して予備的請求に係る確認判決を得ることにより、G銀行から支払保証に係る金銭の支払を受けることができるものと認められるので、予備的請求に係る訴えには、確認の利益がある。

三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

1 【要旨】民事調停規則六条による民事執行の手続の停止の申立てに当たり、同条四項、民訴法七六条(旧民訴法一一二条)、民訴規則二九条(旧民訴規則二条の二)により、支払保証委託契約を締結する方法によって担保を立てる場合において、担保提供義務者である申立人以外の第三者が保証委託者として契約を締結するときは、第三者は、担保提供義務者に代わって、銀行等に対し、担保提供義務者が担保権利者に対して損害賠償債務を負うに至ったときにこれを支払うことを委託するものであり、右契約によって銀行等が支払を約束する債務の内容や、担保権利者による権利行使の方法は、担保提供義務者自身が契約を締結した場合と何ら異なるものではなく、担保権利者である執行停止の相手方が銀行等に対して支払を請求するに当たり提示すべき債務名義又はその請求権の存在を確認する確定判決若しくはこれと同一の効力を有するもの(民訴規則二九条一項一号、二項)は、申立人本人を当事者として成立したものであることを要すると解するのが相当である。

実務上用いられている支払保証委託契約書において第三者が原審判示のように表示されているからといって、右解釈を左右すべき理由はない。

2 これを本件についてみるに、被上告人らの予備的請求は、第三者である上告人を被告として、Dが被上告人らに対して、執行停止の申立てに基づく損害賠償債務を負うことの確認を求めるものであるから、右請求に係る訴えは、被上告人らの担保権の行使のためには無益な訴えというべきであり、このことは、G銀行が原審の指摘するような理解をしていたとしても同様である。

その他、本件において被上告人らが右訴えにつき即時確定の利益を有するものと解すべき事情を認めることはできないから、右訴えは、確認の利益を欠き、不適法なものというほかはない。

以上と異なり、予備的請求につき確認の利益があるとした原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決中予備的請求を認容した部分は破棄を免れず、右部分に係る訴えを却下すべきである。

 原判決中被上告人らの予備的請求を棄却した部分について、職権をもって判断する。
 さきに説示したとおり、予備的請求につき確認の利益があるとした原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、その違法が原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、附帯上告代理人のその余の上告理由について判断を加えるまでもなく、原判決中予備的請求を棄却した部分は破棄を免れず、右部分に係る訴えを却下すべきである。