最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-06-10から1日間の記事一覧

前訴において相手方当事者の不法行為により訴訟手続に関与する機会を奪われたことにより被った精神的苦痛に対する損害賠償請求と前訴判決の既判力

平成10年9月10日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一 甲乙間の前訴において,甲が受訴裁判所の裁判所書記官からの照会に対して乙の就業場所が不明である旨の誤った回答をしたことにより,乙に対して訴状等の付郵便送達がされたため,乙が前訴の訴訟手続に…

1 雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点 2 慰謝料額の認定に違法があるとされた事例

平成6年2月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、じん肺法所定の管理区分についての最終の行政上の決定を受けた時から進行する。2 炭鉱労務に従事してじん…

株主総会の決議を経て内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金につき,集団的,画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから,内規の廃止により未支給の退職慰労年金債権を失わせることの可否

平成22年3月16日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 株主総会の決議を経て,役員に対する退職慰労金の算定基準等を定める会社の内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金について,退任取締役相互間の公…

市立小学校又は中学校の教諭らが勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していた場合において,その上司である各校長に上記教諭らの心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務に違反した過失があるとはいえないとされた事例

平成23年7月12日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 市立小学校又は中学校の教諭らが,ある年度の合計8か月の期間中,勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していた場合において,①上記教諭らの勤務する学校における上司である各校長は上記教諭らに対し…

平成6年12月21日最高裁判所第一小法廷決定 判示事項 違法な捜索差押許可状による差押処分であるとして準抗告棄却決定及び差押処分が取り消された事例 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/006/058006_hanrei.pdf 所論にかんがみ、職権により判断す…

株式会社の代表者が自己又は第三者の利益を図る意思で訴訟行為をした場合と民訴法四二〇条一項三号の再審事由

平成5年9月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 株式会社の代表者が自己又は第三者の利益を図る意思で訴訟行為をし、かつ、相手方において右代表者の意思を知り又は知り得べきであった場合でも、民訴法四二〇条一項三号の再審事由があるとはいえない。 htt…

患者を取り違えて手術をした医療事故において麻酔を担当した医師につき麻酔導入前に患者の同一性確認の十分な手立てを採らなかった点及び麻酔導入後患者の同一性に関する疑いが生じた際に確実な確認措置を採らなかった点で過失があるとされた事例

平成19年3月26日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 1 患者の同一性確認について,病院全体の組織的なシステムの構築,医療を担当する医師や看護婦の間での役割分担の取決め,それらの周知徹底等を欠いている場合には,手術に関与する医師,看護婦等の関係…

輸入しようとした写真集が,関税定率法(平成17年法律第22号による改正前のもの)21条1項4号にいう「風俗を害すべき書籍,図画」等に該当しないとされた事例

平成20年2月19日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 我が国において既に頒布され,販売されているわいせつ表現物を関税定率法(平成17年法律第22号による改正前のもの)21条1項4号による輸入規制の対象とすることは,憲法21条1項に違反しない…

不実の所有権移転登記がされたことにつき所有者に自らこれに積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重い帰責性があるとして民法94条2項,110条を類推適用すべきものとされた事例

平成18年2月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 不動産の所有者であるXから当該不動産の賃貸に係る事務や他の土地の所有権移転登記手続を任せられていた甲が,Xから交付を受けた当該不動産の登記済証,印鑑登録証明書等を利用して当該不動産につき甲へ…

地方自治法242条の2第1項ただし書にいう「回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」に当たらない場合における差止請求住民訴訟の適否

平成12年12月19日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 地方自治法242条の2第1項1号に基づく公金の支出の差止めを求める訴えは、当該公金の支出額が449万5000円であり、同項4号所定の訴訟によって事後的に損害賠償請求等をすることを妨げる事情もないなど判…

不動産競売手続における建物の買受人が民法94条2項、110条の法意により建物所有権を取得してもその敷地の賃借権を取得しないとされた事例

平成12年12月19日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 土地賃借人甲が右土地上に乙名義で建築確認申請をして建物を建築し、乙名義での家屋補充課税台帳への登録を事後的に承認していたところ、乙が甲に無断で建物につき所有権保存登記を経由した上、右登記を…

借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力

平成26年9月25日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力は,原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り,…

保釈取消し決定及び保釈保証金の全部を没取する決定に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件

平成27年9月28日最高裁判所第二小法廷決定 判示事項 あらかじめ告知・弁解等の機会を与えずになされた保釈取消し決定及び保釈保証金没取決定と憲法31条 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/409/085409_hanrei.pdf 平成27年(し)第533号 …

交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において各不法行為者が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することの可否

平成13年3月13日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場…

 1会社の行為が商行為に該当することの主張立証責任 2会社の貸付けが当該会社の代表者の情宜に基づいてされたものとみる余地があっても,当該貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるとされた事例

平成20年2月22日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負う。2 会社の貸付けが当該会…