最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

 拘置所に収容された被勾留者に対する国の安全配慮義務の有無

平成28年4月21日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 国は,拘置所に収容された被勾留者に対して,その不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全配慮義務を負わない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/846/085846_hanrei.pdf …

刑法175条のわいせつな電磁的記録に該当する女性器の三次元形状データファイル又は同データが記録されたCD-Rを頒布した被告人の行為について,正当行為として違法性が阻却されるものではないとされた事例

令和2年7月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 行為者によって頒布された電磁的記録又は電磁的記録に係る記録媒体について,芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の有無・程度をも検討しつつ,刑法175条のわいせつな電磁的記録又はわいせつな電磁…

控訴審が重要な書証の成立について第一審の判断を覆す場合にその署名部分の筆跡鑑定の申出をするかどうかについて釈明権の行使を怠った違法があるとされた事例

平成8年2月22日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 第一審が重要な書証の署名部分について書証を提出した当事者の筆跡鑑定の申出を採用することなくその部分が真正に成立したものと認めていた場合に、右署名の筆跡とその名義人が宣誓書にした署名の筆跡とが…

 仮差押解放金に充てた借入金に対する利息及び自己資金に対する法定利率による金員と違法な仮差押命令の申立てにより債務者に通常生ずべき損害

平成8年5月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 不動産の仮差押命令の申立て及びその執行が債務者に対する不法行為となる場合において、債務者が仮差押解放金を供託してその執行の取消しを求めるため、金融機関から資金を借り入れ、あるいは自己の資金を…

 内縁の夫婦による共有不動産の共同使用と一方の死亡後に他方が右不動産を単独で使用する旨の合意の推認

平成10年2月26日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立し…

贈与者の第三者あて内容証明郵便が民法五五〇条にいう書面に当たるとされた事例

昭和60年11月29日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 甲から不動産を取得した乙がこれを丙に贈与した場合において、乙が、司法書士に依頼して、登記簿上の所有名義人である甲に対し、右不動産を丙に譲渡したので甲から直接丙に所有権移転登記をするよう求め…

著作権法21条の複製権を時効取得する要件としての権利行使の態様とその立証責任

平成9年7月17日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一 漫画において一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれている登場人物のいわゆるキャラクターは、著作物に当たらない。二 二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに…

買戻特約付売買契約の形式を採りながら目的不動産の占有の移転を伴わない契約の性質

平成18年2月7日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である…

意思能力のある子がその自由意思に基づいて拘束者のもとにとどまつているとはいえない特段の事情があるとされた事例

昭和61年7月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 子が意思能力を有していても自由意思に基づいて監護者のもとにとどまつているとはいえない特段の事情がある場合には、監護者の子に対する監護は、なお人身保護法及び同規則にいう拘束に当たる。二 監護…

民法891条5号にいう遺言書の隠匿に当たらないとされた事例

平成6年12月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 被相続人甲からその子乙が遺言公正証書の正本の保管を託され、乙は遺産分割協議の成立に至るまで法定相続人の一人である姉に対して遺言書の存在と内容を告げなかったが、甲の妻丙は甲が公正証書によって遺…

民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合に,その弁済が上記部分に係る債権に充当されたものとして上記判決についての執行判決をすることの可否

令和3年5月25日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記外国裁判所の強制執行手続においてさ…

医師(開業医)に患者を適時に適切な医療機関へ転送すべき義務を怠った過失がある場合において転送が行われていたならば患者に重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されるときの医師の不法行為責任の有無

平成15年11月11日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 開業医が,その下で通院治療中の患者について,初診から5日目になっても投薬による症状の改善がなく,午前中の点滴をした後も前日の夜からのおう吐の症状が全く治まらず,午後の再度の点滴中に軽度の…

街頭募金詐欺について包括一罪と解することができるとされた事例

平成22年3月17日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 1 街頭募金の名の下に通行人から現金をだまし取ろうと企てた者が,約2か月間にわたり,事情を知らない多数の募金活動員を通行人の多い複数の場所に配置し,募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに,募…

破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして上記賃料等の現実の支払を免れた場合において破産管財人は敷金返還請求権の質権者に対して不当利得返還義務を負うとされた事例

平成18年12月21日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求…

証券投資信託であるMMF(マネー・マネージメント・ファンド)の受益者が受益証券を販売した会社に対して有する一部解約金支払請求権を差し押さえた債権者が取立権の行使として上記会社に対し解約実行請求をして同請求権を取り立てることの可否

平成18年12月14日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 証券投資信託であるMMF(マネー・マネージメント・ファンド)であって,(1)投資信託約款において,受益証券の換金は受益者が委託者に対して信託契約の解約の実行を請求する方法によること,この解…

覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用の誤りはないとされた事例

平成25年4月16日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,被告人が,犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ること…

 ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えの適否

平成28年3月4日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法である。(補足意見がある。) https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/725/085725_hanrei.pdf 1 本件は,被上告人の株主である…

検索事業者に対し,自己のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果から削除することを求めることができる場合

平成29年1月31日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 利用者の求めに応じてインターネット上のウェブサイトを検索し,ウェブサイトを識別するための符号であるURLを検索結果として当該利用者に提供する事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ…

犯人の一時的な海外渡航と公訴時効停止の効力

平成21年10月20日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 犯人が国外にいる間は,それが一時的な海外渡航による場合であっても,公訴時効はその進行を停止する。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/091/038091_hanrei.pdf 所論は,本件においては公…

建築主と付近住民との紛争につき建築主に行政指導が行われていることのみを理由として建築確認申請に対する処分を留保することと国家賠償法1条1項所定の違法性

昭和60年7月16日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 建築主が、建築確認申請に係る建築物の建築計画をめぐつて生じた付近住民との紛争につき関係機関から話合いによつて解決するようにとの行政指導を受け、これに応じて住民と協議を始めた場合でも、その後、…

隣接居宅の日照通風を妨害する建物建築につき不法行為の成立が認められた事例

昭和47年6月27日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 居宅の日照、通風は、快適で健康な生活に必要な生活利益であつて、法的な保護の対象にならないものではなく、南側隣家の二階増築が、北側居宅の日照、通風を妨げた場合において、右増築が、建物基準法に違…

弁論更新手続上のかしが補正されたものと認められた事例

昭和51年6月29日最高裁判所第三小法廷判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/824/066824_hanrei.pdf 記録によると、本件第一審の第四回口頭弁論から第八回口頭弁論までの間審理を担当した裁判官のもとでは弁論更新の手続を欠いているが、次いで…

共同不法行為の加害者の各使用者間における求償権の成立する範囲

平成3年10月25日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 共同不法行為の加害者の各使用者が使用者責任を負う場合において、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき…

市が獣医師に飼犬又は飼猫の不妊手術を受けさせた市民にその手術料の一部に相当する金員を補助金として交付するに当たり獣医師を獣医師会支部に所属する者に限定した措置が国家賠償法上違法であるとはいえないとされた事例

平成7年11月7日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 市が、獣医師に飼犬又は飼猫の不妊手術を受けさせた市民である飼主にその手術料の一部に相当する金員を補助金として交付するに当たり、その獣医師を獣医師会支部に所属する者に限定した措置は、その趣旨が…

契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例

昭和59年9月18日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 マンシヨンの購入希望者において、その売却予定者と売買交渉に入り、その交渉過程で歯科医院とするためのスペースについて注文を出したり、レイアウト図を交付するなどしたうえ、電気容量の不足を指摘し、…

民訴法220条4号ロにいう「その提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」の意義   いわゆる災害調査復命書のうち行政内部の意思形成過程に関する情報に係る部分は民訴法220条4号ロ所定の文書に該当するが労働基準監督官等の調査担当者が職務上知ることができた事業者にとっての私的な情報に係る部分は同号ロ所定の文書に該当しないとされた事例

平成17年10月14日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 1 民訴法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密」には,公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密であって,それが本案事件において公にされることにより,私人との信頼関係が損なわ…

土地を時効取得したと主張する者が,当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして,国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えにつき,確認の利益を欠くとされた事例

平成23年6月3日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 表題部所有者の登記も所有権の登記もない土地を時効取得したと主張する者が,当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして,国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えは,次…

違法な仮差押命令の申立てと債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係がないとされた事例

平成31年3月7日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 債権の仮差押命令の申立てが債務者に対する不法行為となる場合において,上記仮差押命令の申立ての後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下…

 交通事故の被害者の近親者が看護等のため被害者の許に往復した場合の旅費と通常損害

昭和49年4月25日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 交通事故の被害者の近親者が看護等のため被害者の許に往復した場合の旅費は、その近親者において被害者の許に赴くことが、被害者の傷害の程度、近親者が看護にあたることの必要性等の諸般の事情からみて、…

担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合における,当該債務者の相続人の民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」該当性

令和3年6月21日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合,当該債務者の相続人は,民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債…