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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例

 昭和59年9月18日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
マンシヨンの購入希望者において、その売却予定者と売買交渉に入り、その交渉過程で歯科医院とするためのスペースについて注文を出したり、レイアウト図を交付するなどしたうえ、電気容量の不足を指摘し、売却予定者が容量増加のための設計変更及び施工をすることを容認しながら、交渉開始六か月後に自らの都合により契約を結ぶに至らなかつたなど原判示のような事情があるときは、購入希望者は、当該契約の準備段階における信義則上の注意義務に違反したものとして、売却予定者が右設計変更及び施工をしたために被つた損害を賠償する責任を負う。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/928/062928_hanrei.pdf

 

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理    由
 上告代理人の上告理由について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の契約準備段階におけ
る信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任を肯定した原審の判断は、是
認することができ、また、上告人及び被上告人双方の過失割合を各五割とした原審
の判断に所論の違法があるとはいえない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づ
き原判決を論難するか、又は原審の裁量に属する過失割合の判断の不当をいうもの
にすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。 

 

Summary of the Court Decision
When a potential buyer of an apartment is in negotiations with the intended seller, and in the course of those negotiations makes requests regarding space to be used for a dental clinic, submits layout plans, points out a lack of electrical capacity, and allows the seller to make design modifications and construction to increase the capacity, but does not finalize the contract due to their own circumstances six months after the start of negotiations, as indicated in the original judgement, the potential buyer is in breach of their duty of care under the principle of good faith during the preparatory stage of the contract. Therefore, they are liable to compensate the intended seller for the damages incurred due to the design changes and construction.

 

弁護士中山知行