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平成6年12月21日最高裁判所第一小法廷決定

判示事項    
違法な捜索差押許可状による差押処分であるとして準抗告棄却決定及び差押処分が取り消された事例

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/006/058006_hanrei.pdf

所論にかんがみ、職権により判断するに、原決定は、本件各捜索差押許可状の発付の経緯等に照らすと、本件各許可状には罪名に誤記があるが、そのかしの程度は小さく、本件各差押処分は、令状に基づくものであって、違法ではないとしたが、右判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。

記録によれば、東京地方裁判所裁判官は、東京地方検察庁検察官から「アメリカ合衆国の要請に係る独占禁止法違反共助事件」について各捜索差押許可状の請求を受けたのに、アメリカ合衆国の要請に係る共助事件である旨を記載することなく、罪名として「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被疑事件」と記載し、差し押さえるべき物として「本件に関係あると思料されるA社、B社及びその他関係会社、関係団体並びに関係機関との連絡文書」等と掲記した本件各許可状を発付し、同検察庁検察事務官は本件各許可状により右共助事件に関する本件各差押処分をしたことが認められる。

本件各許可状は、その記載内容からすると、右共助事件について発付されたものとみることはできず、本件各許可状に基づき右共助事件に関してされた本件各差押処分が違法であることは明らかである。

したがって、本件各差押処分が違法ではないとした原決定には決定に影響を及ぼすべき法令の違反があり、これを取り消さなければ著しく正義に反するものといわざるを得ない。