最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

 行政処分が通知ではなく告示をもって画一的に告知される場合における行政不服審査法14条1項にいう「処分があったことを知った日」の意義

平成14年10月24日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 行政処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には,行政不服審査法14条1項にいう「処分があったことを知った日」とは,告示があった日をいう。 https://www.…

交通事故と被害者の自殺との間に相当因果関係があるとされた事例

平成5年9月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 交通事故により受傷した被害者が自殺した場合において、その傷害が身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を残すようなものでなかったとしても、右事故の態様が加害者の一方的過失によるものであって被害者に大…

 将来発生する金銭債務を基礎とする準消費貸借

昭和40年10月7日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 将来金員を貸与する旨の契約が締結された場合には、その契約が履行される以前でも、その金員をもつて準消費貸借の目的とすることを約することができ、その後右金員が貸与されたとき、右準消費貸借契約は、…

監査役との兼任を禁止されている者を監査役に選任する旨の株主総会決議の効力

平成元年9月19日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 市町村の助役を取締役に選任する旨の株主総会決議は、当該株式会社が地方自治法一四二条の関係私企業に該当する場合であつても、有効である。二 商法二七六条の規定により監査役との兼任を禁止されてい…

組合契約の無効と組合員のした組合名義による物件売渡契約の効力

昭和41年11月25日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 組合員が組合名義で第三者に対し物件の売渡契約を締結した場合には、当該組合契約が無効であつても、右組合員は右第三者に対し代金債権を有する。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/958/053…

併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合にその罪について死刑又は無期刑を選択することの可否

平成19年3月22日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合であっても,死刑又は無期刑を選択する結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で考慮し…

労働者の新規採用契約においてその適性の評価・判断のために設けられた期間の性質

平成2年6月5日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 労働者の新規採用契約においてその適性を評価し、判断するために期間を設けた場合には、右期間の満了により右契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる…

 夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同せいにより第三者に対して取得する慰謝料請求権の消滅時効の起算点

平成6年1月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同せいにより第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同せい関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行す…

 株主総会決議無効確認の訴が株主総会決議取消の訴の要件をみたしている場合における決議取消の主張と決議取消の訴としての出訴期間の遵守

昭和54年11月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 株主総会決議無効確認の訴の決議無効原因として主張された瑕疵が決議取消原因に該当し、しかも、右訴が決議取消訴訟の出訴期間内に提起されている場合には、決議取消の主張が出訴期間経過後にされたとし…

公序良俗に反する無効な出資と配当に関する契約により給付を受けた金銭の返還につき,当該給付が不法原因給付に当たることを理由として拒むことは信義則上許されないとされた事例

平成26年10月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 破産者甲との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,乙が当該契約により給付を受けた金銭の返還を求められた場合において,当該金銭は無限連鎖講に該当する事業によって給付された配当金であって…

 大韓民国の裁判所に起訴された共犯者の公判廷における供述を記載した同国の公判調書と刑訴法321条1項3号にいう「特に信用すべき情況」

平成15年11月26日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 大韓民国の裁判所に起訴された共犯者が,自らの意思で任意に供述できるよう手続的保障がされている同国の法令にのっとり,同国の裁判官,検察官及び弁護人が在廷する公開の法廷において,質問に対し陳述…

養子縁組の当事者である夫婦の一方に縁組の意思がない場合に他方の配偶者について縁組が有効とされた事例

昭和48年4月12日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一、夫婦が共同して養子縁組をするものとして届出がされたところ、その一方に縁組をする意思がなかつた場合には、原則として、縁組の意思のある他方の配偶者についても縁組は無効であるが、その他方と縁組…

特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことを理由とする国家賠償請求事件において損害の発生を認めるべきであって損害額の立証が困難であったとしても民訴法248条により相当な損害額が認定されなければならないとされた事例

平成18年1月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかった場合,これによる損害の額は,特段の事情のない限り,その被担保債権が履行遅滞に陥ったころ,当該質権を実行するこ…

会社が職制等を通じて特定政党の党員又はその同調者である従業員を監視し孤立させるなどした行為が人格的利益を侵害する不法行為に当たるとされた事例

平成7年9月5日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 会社が、特定の従業員につき、同人らにおいて現実に企業秩序を破壊し混乱させるおそれがあるとは認められないにもかかわらず、特定政党の党員又はその同調者であることのみを理由として、職制等を通じて、職…

 複数の公務員が国又は公共団体に対して連帯して国家賠償法1条2項による求償債務を負う場合

令和2年7月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が,その職務を行うについて,共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき,国又は公共団体がこれを賠償した場合においては,当該公務員らは,国…

医師が化膿性髄膜炎の治療としてしたルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)の施術とその後の発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定したのが経験則に反するとされた事例

昭和50年10月24日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 重篤な化膿性髄膜炎に罹患した三才の幼児が入院治療を受け、その病状が一貫して軽快していた段階において、医師が治療としてルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)を実施したの…

女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合における出生した子の母

平成19年3月23日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 1 民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しない。2 女性が自己以外の女性の…

特定の土地の分割方法を定めた遺言の存在を知らないでされた遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえないとされた事例

平成5年12月16日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 特定の土地につきおおよその面積と位置を示して分割した上それぞれを相続人甲、乙、丙に相続させる趣旨の分割方法を定めた遺言が存在したのに、相続人丁が右土地全部を相続する旨の遺産分割協議がされた場…

建物の区分所有等に関する法律70条は,憲法29条に違反しない。

平成21年4月23日最高裁判所第一小法廷判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/541/037541_hanrei.pdf 上告代理人の上告理由のうち建物の区分所有等に関する法律(「区分所有法」)70条が憲法29条に違反する旨をいう部分について (1) 区分所…

抗告事件を終了させることを合意内容に含む裁判外の和解と抗告の利益

平成23年3月9日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 抗告人と相手方との間において,抗告後に,抗告事件を終了させることを合意内容に含む裁判外の和解が成立した場合には,当該抗告は,抗告の利益を欠く。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/152…

特定物の給付を目的とする債務についての保証人に対し当該物件の給付義務の履行を求めることができるか

昭和42年2月17日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 保証人が特定物の給付を目的とする債務を保証した場合に、その後保証人が当該物件の給付義務の履行をすることができる地位を取得したときは、債権者は保証人に対し右物件の給付義務の履行を求めることがで…

判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいう

平成14年1月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 旧民訴法70条所定の効力が及ぶ判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいう。 https://www.c…

親会社の株主の子会社の会社帳簿等閲覧許可決定等に対する抗告審の変更決定等に対する許可抗告事件

平成21年1月15日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 子会社の会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をした親会社の株主につき,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)293条の8第2項が不許可事由として規定する同法293条の7第2号に掲げる事由が…

刑事事件の捜査に関して作成された書類の写しで,それ自体もその原本も公判に提出されなかったものを,その捜査を担当した都道府県警察を置く都道府県が所持する場合に,当該写しにつき民訴法220条1号所定のいわゆる引用文書又は同条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして提出を命ずることの可否

平成31年1月22日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条1号所定のいわゆる引用文書に該当し,かつ,当該文書の保管者…

ハーグ条約実施法の規定する子の返還申立事件に係る家事調停における子を返還する旨の定めと同法117条1項の類推適用

令和2年4月16日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 裁判所は,ハーグ条約実施法の規定する子の返還申立事件に係る家事調停において,子を返還する旨の調停が成立した後に,事情の変更により同調停における子を返還する旨の定めを維持することを不当と認める…

いわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で違法に金員を取得する手段として著しく高利の貸付けの形をとって借主に金員を交付し,借主が貸付金に相当する利益を得た場合に,借主からの不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として借主の損害額から控除することは,民法708条の趣旨に反するものとして許されないとされた事例(ヤミ金には1円も返済しなくて良い)

平成20年6月10日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該醜悪な行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得…

会社分割に伴いゴルフ場の事業を承継した会社が預託金会員制のゴルフクラブの名称を引き続き使用している場合における上記会社の預託金返還義務の有無

平成20年6月10日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられている場合において,会社分割に伴いゴルフ場の事業が他の会社又は設立会社に承継され,事業を承継した会社が上記名称…

相手方の同意を得ないで相手方との会話を録音したテープの証拠能力が認められた事例

平成12年7月12日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 詐欺の被害を受けたと考えた者が、相手方の説明内容に不審を抱き、後日の証拠とするため、相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく、そ…

遺産分割協議と民法541条による解除の可否

平成元年2月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が右協議において負担した債務を履行しないときであつても、その債権を有する相続人は、民法541条によつて右協議を解除することができない…

 賃料増額請求権の行使と一定期間経過の要否

平成3年11月29日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 借家法七条一項の規定に基づく賃料増額請求権を行使するには、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していることを要しない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/691/062691_hanrei.…