最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

訴因の特定

昭和37年11月28日最高裁判所大法廷判決 裁判要旨 一 出入国管理令第六〇条は、憲法第二二条第二項に違反しない。二 密出国の日時を「昭和二七年四月頃より同三三年六月下旬まで」、その場所を「本邦より本邦外の地域たる中国に」と各表示し、その方法につき…

構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力

昭和62年11月10日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権…

同一の敷地にあって一つのリゾートホテルを構成している複数の建物の固定資産課税台帳の登録価格についてされた審査申出の棄却決定の取消しを求める各請求が互いに行政事件訴訟法13条6号所定の関連請求に当たるとされた事例

平成17年3月29日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 同一の敷地にあって一つのリゾートホテルを構成している同一人所有の複数の建物について,固定資産課税台帳に登録された同一年度の価格につき需給事情による減点補正がされていないのは違法であるとしてさ…

国会議員が国会の質疑等の中でした発言と国家賠償責任

平成9年9月9日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 国会議員が国会の質疑、演説、討論等の中でした個別の国民の名誉又は信用を低下させる発言につき、国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、当該…

特許発明または実用新案の技術的範囲についての判定は行政不服審査の対象となるか

昭和43年4月18日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一、特許発明または実用新案の技術的範囲についての判定は、特許庁のたんなる意見の表明であつて、鑑定的性質を有するにとどまる。二、右判定は行政不服審査の対象となりえない。 https://www.courts.go.j…

 代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合にその本案訴訟において会社を代表すべき者

昭和59年9月28日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表…

 抵当権設定登記後に賃借権の時効取得に必要な期間不動産を用益した者が賃借権の時効取得を当該不動産の競売又は公売による買受人に対抗することの可否

平成23年1月21日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 不動産につき賃借権を有する者がその対抗要件を具備しない間に,当該不動産に抵当権が設定されてその旨の登記がされた場合,上記の者は,上記登記後,賃借権の時効取得に必要とされる期間,当該不動産を継…

自動車の買主が,当該自動車が車台の接合等により複数の車台番号を有することが判明したとして,錯誤を理由に売買代金の返還を求めたのに対し,売主が移転登録手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例

平成21年7月17日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 Xが,Yから購入して転売した自動車につき,Yから転売先に直接移転登録がされた後,車台の接合等により複数の車台番号を有するものであったことが判明したとして,Yに対し錯誤による売買契約の無効を理…

物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続請求における弁済と抹消登記手続義務との関係(引換給付判決は違法,弁済を条件とする抹消登記はOK)

昭和63年4月8日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続を求める請求は、将来物上保証人が被担保債権を弁済することを条件としても、認容…

刑訴法328条により許容される証拠

平成18年11月7日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとす…

神社の行事に参集した群集の雑踏により多数の死者を生じた事故についてその行事を企画施行した当該神社の職員に右事故の発生を予見しこれを未然に防止するための措置をとるべき注意義務があるとされた事例

昭和42年5月25日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 大みそかから元旦にかけて特定の神社(新潟県西蒲原郡a村所在A神社)に参拝することが二年まいりと呼ばれ、これがその地方では神社の著名な行事とされていて、例年多数の参拝者が境内に参集する慣わしに…

第三債務者が仮差押命令の送達を受けた時点で仮差押えの対象となった債権の弁済のために取引銀行に対し先日付振込みの依頼をしていた場合において上記送達後にされた振込みによる弁済を仮差押債権者に対抗することの可否

平成18年7月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 債権者甲が債務者乙の第三債務者丙に対する金銭債権の仮差押えをした場合において,丙が,仮差押命令の送達を受けた時点で,既に当該仮差押えの対象となった債権の弁済のために取引銀行に対し他の金融機関…

会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者が同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合における上記の者の同法318条4項にいう「債権者」該当性

令和3年7月5日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は,同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても,上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは…

被害者の証人尋問において,捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を示すことを許可した裁判所の措置に違法がないとされた事例

平成23年9月14日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 1 被害者の証人尋問において,検察官が,証人から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するため,証拠として採用されていない捜査段階で撮影された被害者による被害再現…

再審による無罪判決の確定と裁判の違法性

平成2年7月20日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 再審により無罪判決が確定した場合であっても、裁判官がした裁判につき国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が認められるためには、当該裁判官が、違法又は不当…

海と民法八六条一項にいう土地

昭和61年12月16日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 海は、民法施行当時特定の者が排他的総括支配権を取得していたときを除いては、同法八六条一項にいう土地に当たらない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/661/052661_hanrei.pdf 一 原審が…

取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において株式会社が取締役を補助するため訴訟に参加することの許否

平成13年1月30日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において,株式会社は,特段の事情がない限り,取締役を補助するため訴訟に参加することが許される。(反対意見がある。) https…

火災保険普通保険約款上保険会社が保険金の支払につき遅滞の責めを負うべき時期

平成9年3月25日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 保険会社は保険契約者又は被保険者が保険の目的について損害が発生したことを通知し所定の書類を提出した日から三〇日以内に保険金を支払う、ただし、保険会社が右期間内に必要な調査を終えることができな…

設定登記のされていない通行地役権について承役地の譲受人が登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないと解すべき場合

平成10年2月13日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ…

妻が,夫に対し,夫との間に法律上の親子関係はあるが,妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき,離婚後の監護費用の分担を求めることが,権利の濫用に当たるとされた事例

平成23年3月18日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 妻が,夫に対し,夫との間に法律上の親子関係はあるが,妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子につき,離婚後の監護費用の分担を求めることは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,権利の濫…

物上保証人所有の不動産を目的とする競売の開始決定の債務者への送達が債務者の所在が不明であるため公示送達によりされた場合における被担保債権の消滅時効の中断

平成14年10月25日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 物上保証人所有の不動産を目的とする競売手続において,債務者の所在が不明であるため,開始決定の債務者への送達が公示送達によりされた場合には,民訴法111条の規定による掲示を始めた日から2週間…

株主総会の決議の成立と採決手続を経ることの要否

昭和42年7月25日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票など…

枉法収賄と贈賄の各訴因の間に公訴事実の同一性が認められる事例

昭和53年3月6日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 「被告人甲は、公務員乙と共謀のうえ、乙の職務上の不正行為に対する謝礼の趣旨で、丙から賄賂を収受した」という枉法収賄の訴因と、「被告人甲は、丙と共謀のうえ、右と同じ趣旨で、公務員乙に対して賄賂…

第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合における当該建物の明渡請求と併合されている他の請求の当否等についての控訴審の判断

平成24年4月6日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合には,控訴審は,当該建物の明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や同請求に対する抗弁において主張され…

地方公務員共済組合の組合員の破産手続中に自由財産である退職手当の中から組合の破産債権に対して地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法によりされた弁済が組合員による任意の弁済であるというための要件

平成18年1月23日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 1 破産者は,破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることを妨げられない。2 地方公務員共済組合の組合員の破産手続中にその自由財産である退職手当の中から地方公務員等共済組合…

債務者が生計費および子女の教育費を借用するため貸主に対し唯一の動産を譲渡担保に供した行為が詐害行為にあたらないとされた事例

昭和42年11月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 他に資力のない債務者が、生計費および子女の大学進学に必要な費用を借用するため、その所有の家財衣料等を担保に供する等原審の確定した事実関係(原判決理由参照)のもとでは、その担保供与行為は、担保…

正当事由を補完する立退料等の提供ないし増額の申出の時期

平成6年10月25日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 借地法四条一項所定の正当事由を補完する立退料等金員の提供ないしその増額の申出は事実審の口頭弁論終結時までにされたものについては、原則としてこれを考慮することができる。 https://www.courts.go.j…

不当景品類及び不当表示防止法の規定にいう一般消費者と公正取引委員会による公正競争規約の認定に対する同法一〇条六項に基づく不服申立の利益

昭和53年3月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 不当景品類及び不当表示防止法一〇条六項にいう「第一項の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的…

東京都公文書の開示等に関する条例七条に基づいてされた公文書の非開示決定が理由付記の要件を欠き違法であるとされた事例

平成4年12月10日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 東京都公文書の開示等に関する条例五条に基づき「個人情報実態調査に関して警視庁から入手、取得した一切の文書」の開示の請求をした者に対する非開示決定の通知書に、非開示の理由として、「東京都公文書…

 他人の刑事事件について捜査官と相談しながら虚偽の供述内容を創作するなどして供述調書を作成した行為は捜査官が証拠偽造罪に当たるとされた事例

平成28年3月31日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 参考人として捜査官に対して虚偽の供述をし,それに基づき供述調書が作成された場合とは異なり,第三者の覚せい剤所持という架空の事実に関する令状請求のための証拠を作り出す意図で,捜査官と相談しなが…