併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合にその罪について死刑又は無期刑を選択することの可否
平成19年3月22日最高裁判所第二小法廷決定
裁判要旨
併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合であっても,死刑又は無期刑を選択する結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で考慮し,上記1個の罪について死刑又は無期刑を選択することができる。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/385/034385_hanrei.pdf
所論にかんがみ職権で判断する。
所論は,有罪判決の法令の適用において,併合罪関係にある数罪のうちの1個の罪について無期懲役刑を選択できるのは,その罪のみで無期懲役刑に処するのが相当な場合に限られ,刑法46条2項はその趣旨を示すものである旨主張する。
しかし,刑法46条は,併合罪関係にある複数の罪のうち1個の罪について死刑又は無期刑に処するときは,一定の軽い刑を除き,他の刑を科さない旨を規定しているところ,これは,1個の罪について死刑又は無期刑に処するときに,その結果科されないこととなる刑に係る罪を不問に付する趣旨ではなく,その刑を死刑又は無期刑に吸収させ,これらによってその罪をも処罰する趣旨のものと解される。
したがって,併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪について死刑又は無期刑を選択する際には,その結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で,考慮できるというべきであり,当該1個の罪のみで死刑又は無期刑が相当とされる場合でなければそれらの刑を選択できないというものではない。
なお,刑種の選択は量刑の一部であるので,他の犯罪事実の存在,内容をその事情の一つとして考慮することが許されるのは,当然である。