最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

組合契約の無効と組合員のした組合名義による物件売渡契約の効力

昭和41年11月25日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
組合員が組合名義で第三者に対し物件の売渡契約を締結した場合には、当該組合契約が無効であつても、右組合員は右第三者に対し代金債権を有する。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/958/053958_hanrei.pdf

職権をもつて考えると、上告人(原告ら)らの本訴請求は、上告人らは被上告人(被告)らに対し、上告人らにより組織された組合が被上告人らに対し売り渡した魚類の売買代金の支払を求めるものであるところ、原判決は、右組合は、上告人Aにおいてその有する漁業権ないしその使用権を組合に出資し、これにより上告人らが共同してその漁場における定置漁業を営むことを約することによつて成立したものであるが、右組合契約は漁業法に違反し公の秩序に反する事項を目的とする法律行為であつて無効であるから、上告人らの本訴請求は失当であるというのである。

しかしながら、組合は法人格を有しないから、組合員全員において物件を第三者に売り渡した場合はもちろん、組合代理権を有する一名の組合員が組合の名義で右売買行為をなした場合においても、売主として右第三者に対し代金債権を取得するのは組合員全員であるといわなければならない。

ただ、当該債権は、組合債権であるから、民法六六八条にいう総組合員の共有に属し、総組合員によらなければこれを請求しえないものにすぎない。

従つて、もし組合契約が原判決判示の理由で無効であつたとしても、組合員の全員に当る上告人両名において本件売買契約を締結したのであれば、上告人両名が右売買による代金債権を取得し、ただこれが民法六六八条にいう共有に属しないだけであるし、また、上告人両名のうちの誰か一人が組合名義で右契約を締結したのであれば、少なくとも当人は右売買代金債権を取得するのである。

そして、右契約は同時に他の組合員の代理人名義ででも締結されたことになり、組合契約が無効であれば代理権欠缺の理由で他の組合員が右売買契約による代金債権を取得しないものにすぎない。

従つて、原判決判示のように本件組合契約が無効であるとしても、原判決の結論をそのまま是認するに由がなく、原判決は法律の解釈適用を誤つた違法があるといわなければならない。

そして、原判決は、本件売買契約が誰れによつて締結されたかを確定していないから、原判決の全部を破棄し、本件を原審札幌高等裁判所函館支部に差し戻すべきである。