最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-06-13から1日間の記事一覧

労働組合が自然消滅した場合におけるその組合への金員の支払を命じていた救済命令の拘束力の消長と右命令の取消しを求める訴えの利益

平成7年2月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 組合員が存在しなくなったことなどにより労働組合が自然消滅した場合には、その組合が清算法人として存続していたとしても、使用者に対し右組合への金員の支払を命じていた救済命令の拘束力は失われ、その…

税務調査のため臨場した国税調査官が納税者の店舗兼作業場の内部に立ち入つた行為が所得税法二三四条一項に基づく質問検査権の範囲内の正当な行為とはいえないとされた事例

昭和63年12月20日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 原判示の事実関係(原判文参照)のもとにおいては、税務調査のため納税者の店舗兼作業場に臨場した国税調査官が、納税者の不在を確認する目的で、同人の意思に反して内扉の止め金を外して内部まで立ち入…

 部分ストライキと民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」

昭和62年7月17日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 部分ストライキによつてストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となつた場合は、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもつてことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情がない限り、…

株式の譲渡につき名義書換が未了の場合,会社はその譲渡を認めることができるか

昭和30年10月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一 商法旧第206条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主と…

一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとはいえないとされた事例

平成25年3月26日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主事による建築確認は,当該計画の内容が建築基準関係規定に明示的に定められた要件に適合しないものであるときに,申請書類の記載事項における誤りが明…

裁判官の行なう裁判と国家賠償法の適用の有無

昭和43年3月15日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 裁判官の行なう裁判についても、国家賠償法の適用は当然には排除されない。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/303/066303_hanrei.pdf 裁判官のなす職務上の行為について、一般に、国家賠償法…

境界確定訴訟の提起による所有権に関する取得時効中断の効力が生じないものとされる場合

平成元年3月28日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 隣接する一方の土地の所有者甲が、乙主張の境界を越えて隣接地の一部を占有しているため、右隣接地の所有者乙が甲による右占有部分の取得時効完成前に甲に対して提起した境界確定訴訟において、乙主張のと…

建物の賃貸人が現実に提供された賃料の受領を拒絶した場合とその後における賃料不払を理由とする契約の解除

昭和45年8月20日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 建物の賃貸人が現実に提供された賃料の受領を拒絶したときは、特段の事情がないかぎり、その後において提供されるべき賃料についても、受領拒絶の意思を明確にしたものと解すべきであり、右賃貸人が賃借人…

電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことの許否

令和3年2月1日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し,同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に,国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモ…

司法警察員による被疑者の留置についての国家賠償法一条一項所定の違法性の判断基準

平成8年3月8日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 司法警察員による被疑者の留置は、司法警察員が、留置時において、捜査により収集した証拠資料を総合勘案して刑訴法203条1項所定の留置の必要性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していること…

登記等を受けた者が登録免許税法(平成14年法律第152号による改正前のもの)31条2項に基づいてした請求に対する登記機関の拒否通知と抗告訴訟の対象

平成17年4月14日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 過大に登録免許税を納付して登記等を受けた者は,登録免許税法(平成14年法律第152号による改正前のもの)31条2項所定の請求の手続によらなくても,国税通則法56条に基づき,過誤納金の還付…

法定刑の軽微な事件について身柄拘束の不必要な長期化を避けるための配慮が十分であったとはいえないとされた事例

平成14年6月5日最高裁判所第二小法廷決定 判示事項 1 法定刑の軽微な事件について身柄拘束の不必要な長期化を避けるための配慮が十分であったとはいえないとされた事例2 罰金刑に未決勾留日数を算入しなかったことが量刑判断を誤ったものであるが,原判決…