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税務調査のため臨場した国税調査官が納税者の店舗兼作業場の内部に立ち入つた行為が所得税法二三四条一項に基づく質問検査権の範囲内の正当な行為とはいえないとされた事例

 昭和63年12月20日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
原判示の事実関係(原判文参照)のもとにおいては、税務調査のため納税者の店舗兼作業場に臨場した国税調査官が、納税者の不在を確認する目的で、同人の意思に反して内扉の止め金を外して内部まで立ち入つた行為は、所得税法二三四条一項に基づく質問検査権の範囲内の正当な行為とはいえない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/339/062339_hanrei.pdf

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし首肯するに足り、右事実及び原審が適法に確定したその余の事実関係のもとにおいて、原判示の国税調査官が税務調査のため本件店舗に臨場し、被上告人の不在を確認する目的で、被上告人の意思に反して同店舗内の内扉の止め金を外して第一審判決別紙図面⑥地点の辺りまで立ち入つた行為は、所得税法二三四条一項に基づく質問検査権の範囲内の正当な行為とはいえず(最高裁昭和四八年七月一〇日第三小法廷決定)、国家賠償法一条一項に該当するとした原審の判断は、正当として是認することができる。