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特定物の給付を目的とする債務についての保証人に対し当該物件の給付義務の履行を求めることができるか

昭和42年2月17日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
保証人が特定物の給付を目的とする債務を保証した場合に、その後保証人が当該物件の給付義務の履行をすることができる地位を取得したときは、債権者は保証人に対し右物件の給付義務の履行を求めることができる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/275/066275_hanrei.pdf

原判決は、被上告人の先代Dと訴外Eとの間で、右D所有の本件土地につき原判示の賃貸借契約を締結し、上告人A1が右Eの賃借人としての債務につき保証人となつたこと、Eは昭和三〇年五月一四日死亡し、上告人A3、同A2、同A4が相続により本件賃貸借の賃借人たる地位を承継したこと、本件賃貸借契約は昭和三〇年七月二四日賃料不払により適法に解除されたことを確定したうえ、上告人A1は、被上告人に対し、保証債務の履行として、本件土地を明け渡し、かつ、昭和三〇年七月二五日以降右明渡済まで一ケ月七三六〇円の割合による賃料相当の損害金を支払う義務がある旨判示している。

ところで、保証人が特定物の給付を目的とする債務を保証した場合に、保証人が右債務の履行をすることができないときは、債権者は保証人に対し履行不能による損害賠償を求め得るにとどまるが、もし保証人がなんらかの事由によつて当該物件の給付義務の履行ができる地位を取得したときは、債権者は保証人に対し右物件の給付義務の履行を求めることができるものと解するのが相当である(大正一三年一月三〇日大審院決定)。

これを本件についてみるのに、上告人A1が前記賃貸借契約に基づく訴外Eの被上告人に対する債務を保証したことは前記のとおりであるが、同上告人が右賃貸借契約の解除による原状回復義務の履行として被上告人に対し本件土地を明け渡すことのできる地位にあることについては、原審において被上告人の主張立証しないところであり、したがつて、原審の確定しないところであるから、被上告人の上告人A1に対する請求のうち本件土地の明渡を求める部分は失当として棄却すべきであつて、これを認容した原判決および第一審判決は破棄を免れず、この点の論旨は理由がある。 

 これを要するに、第一、二審判決中、上告人A1に対する本件土地明渡請求に関する部分を破棄して、右請求を棄却し、同上告人のその余の部分の上告ならびにその余の上告人らの上告を棄却すべきものとする。