最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-07-12から1日間の記事一覧

 刑事訴訟手続において外国の管轄司法機関により行われた嘱託証人尋問の調書の民事訴訟における証拠能力

平成7年6月29日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 刑事訴訟手続において外国の管轄司法機関により行われた嘱託証人尋問の調書は、当事者に反対尋問の機会が与えられていなくても、民事訴訟において書証としての証拠能力を有する。 https://www.courts.go.jp…

共有者の一人がした告訴の効力範囲

昭和35年12月22日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 共有者の一人が共有物に関する犯罪に対して告訴をしたときは、告訴人が被害共有物について有する持分の多少にかかわらず、不可分的に被害共有物全部に関する犯罪の訴追に対し効力が及ぶ。 https://www.co…

取締役会の無効な決議により選任された代表取締役がした行為と商法二六二条の類推適用

昭和56年4月24日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 取締役会の無効な決議により選任された代表取締役が会社の代表としてした行為については、会社は、商法二六二条の類推適用により、善意の第三者に対してその責に任ずべきものである。 https://www.courts.…

河川の改修、整備がされた後に水害発生の危険の予測が可能となった場合における河川管理の瑕疵

平成2年12月13日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 一 工事実施基本計画に準拠して新規の改修、整備の必要がないものとされた河川における河川管理の瑕疵の有無は、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに…

耳が聞こえず言葉も話せないことなどから被告人の訴訟能力に疑いがある場合と刑訴法三一四条一項本文による公判手続の停止

平成7年2月28日最高裁判所第三小法廷決定 裁判要旨 一 刑訴法三一四条一項にいう「心神喪失の状態」とは、被告人としての重要な利害を弁別し、それに従って相当な防御をすることのできる能力、すなわち訴訟能力を欠くという状態をいう。二 耳が聞こえず言葉…

請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について注文者が履行遅滞による責任を負う時期

平成9年7月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌…

 不実の所有権移転登記がされたことにつき所有者に自らこれに積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重い帰責性があるとして民法94条2項,110条を類推適用すべきものとされた事例

平成18年2月23日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 不動産の所有者であるXから当該不動産の賃貸に係る事務や他の土地の所有権移転登記手続を任せられていた甲が,Xから交付を受けた当該不動産の登記済証,印鑑登録証明書等を利用して当該不動産につき甲へ…

従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして暴行事件から7年以上経過した後にされた諭旨退職処分が権利の濫用として無効とされた事例

平成18年10月6日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして,使用者が捜査機関による捜査の結果を待った上で上記事件から7年以上経過した後に諭旨退職処分を行…

地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく公金の支出の差止請求がその対象の特定に欠けるところはないとされた事例

平成5年9月7日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく差止請求において、複数の行為を包括的にとらえて差止請求の対象とする場合、その一つ一つの行為を個別、具体的に摘示することまでが常に必要とされるものでは…

 差止めの訴えの訴訟要件である「行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があること」を満たさない場合における,将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟の適否

令和元年7月22日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟は,差止めの訴えの訴訟要件である「行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があること」を満たさない…