最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

共有者の一人がした告訴の効力範囲

昭和35年12月22日最高裁判所第二小法廷決定

裁判要旨    
共有者の一人が共有物に関する犯罪に対して告訴をしたときは、告訴人が被害共有物について有する持分の多少にかかわらず、不可分的に被害共有物全部に関する犯罪の訴追に対し効力が及ぶ。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/573/051573_hanrei.pdf

本件は親族間の事犯にかかる親告罪であるが、第一審判決は適法な告訴なくして公訴を提起された事実を審理し有罪を言渡し、原判決はこれを支持した違法があるというにあるところ、被害者Aの告訴は法定の期間内に適法になされていることは記録上明らかであり、しかも共有者の一人が共有物に関する犯罪に対して告訴をしたときは、告訴人が被害共有物について有する持分の多少にかかわらずその告訴は不可分的に被害共有物全部に関する犯罪の訴追に対し効力を及ぼすものであるから、右Aの告訴が存する以上、同人らの共有にかかる本件不動産の売却代金を被告人が着服横領したという事実につき審理判決するための訴訟条件に欠くるところは存しない。(大正一四年六月一一日大審院判決)また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。