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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人から法定相続分に応じた共有持分権を譲り受けた者が取得する持分の割合(重要)

 平成5年7月19日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
遺言により法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人が、遺産を構成する特定不動産に法定相続分に応じた共同相続登記がされたことを利用し、右登記に係る自己の共有持分権を第三者に譲渡し、第三者が右持分の移転登記を受けたとしても、右第三者は右共同相続人の指定相続分に応じた持分を取得するにとどまる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/014/063014_hanrei.pdf

 原審の適法に確定した事実関係によれば、

(一) Dの死亡によりE及び被上告人を含む四名の子が本件土地を共同相続し、Dが遺言で各相続人の相続分を指定していたため、Eの相続分は八〇分の一三であった、

(二) Eは、本件土地につき各相続人の持分を法定相続分である四分の一とする相続登記が経由されていることを利用し、右E名義の四分の一の持分を上告人に譲渡し、上告人は右持分の移転登記を経由した、というのである。

右の事実関係の下においては、Eの登記は持分八〇分の一三を超える部分については無権利の登記であり、登記に公信力がない結果、上告人が取得した持分は八〇分の一三にとどまるというべきである(最高裁昭和三八年二月二二日第二小法廷判決)。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。