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「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記

 平成14年6月10日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/433/062433_hanrei.pdf

1 原審の認定によれば,本件の経過は,次のとおりである。被上告人は,夫である被相続人Dがした,原判決添付物件目録記載の不動産の権利一切を被上告人に相続させる旨の遺言によって,上記不動産ないしその共有持分権を取得した。法定相続人の1人であるEの債権者である上告人らは,Eに代位してEが法定相続分により上記不動産及び共有持分権を相続した旨の登記を経由した上,Eの持分に対する仮差押え及び強制競売を申し立て,これに対する仮差押え及び差押えがされたところ,被上告人は,この仮差押えの執行及び強制執行の排除を求めて第三者異議訴訟を提起した。

 2 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は,特段の事情のない限り,何らの行為を要せずに,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される(最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決)。このように,「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は,法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして,法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については,登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最高裁昭和38年2月22日第二小法廷判決,最高裁平成5年7月19日第二小法廷
判決)。したがって,

【要旨】本件において,被上告人は,本件遺言によって取得した不動産又は共有持分権を,登記なくして上告人らに対抗することができる。

 3 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。