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無断転貸にもかかわらず賃貸借の解除ができない場合にされた賃貸借の合意解除と転借人の地位

昭和62年3月24日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
土地の無断転貸が行われたにもかかわらず賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が賃貸借を解除することができない場合において、当該賃貸借が合意解除されたとしても、それが賃料不払等による法定解除権の行使が許されるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は右合意解除の効果を転借人に対抗することができない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/470/070470_hanrei.pdf

土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく右土地を他に転貸しても、転貸について賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が民法六一二条二項により賃貸借を解除することができない場合において、賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使ができるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがつて、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。

けだし、賃貸人は、賃借人と賃貸借を合意解除しても、特段の事情のない限り、転貸借について承諾を与えた転借人に対しては右合意解除の効果を対抗することはできないものであるところ(大審院昭和九年三月七日判決、最高裁昭和三七年二月一日第一小法廷判決、同昭和三八年二月二一日第一小法廷判決)、賃貸人の承諾を得ないでされた転貸であつても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため、賃貸人が右無断転貸を理由として賃貸借を解除することができない場合には、転借人は承諾を得た場合と同様に右転借権をもつて賃貸人に対抗することができるのであり(最高裁昭和三九年六月三〇日第三小法廷判決、同昭和四二年一月一七日第三小法廷判決、同昭和四五年一二月一一日第二小法廷判決)、したがつて、賃貸人が賃借人との間でした賃貸借の合意解除との関係において、賃貸人の承諾を得た転貸借と賃貸人の承諾はないものの賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある転貸借とを別異に取り扱うべき理由はないからである。

そして、右の理は、仮換地の指定を受けた者が仮換地につき他の者とその使用収益を目的とする賃貸借類似の契約(「仮換地の賃貸借」)を締結し、その者が更に第三者と右仮換地の使用収益を目的とする賃貸借類似の契約(「仮換地の転貸借」)を締結した場合についてもひとしく妥当するものというべきである。

ところで、本件記録によると、原審において上告人A4を除くその余の上告人らは、被上告人らの本件換地の所有権に基づく本訴各請求に対し、その各占有部分(上告人A5については第一審判決別紙第二目録(四)の「F」―「1」建物部分の敷地)についての占有権原として、

(一) (1)上告人A4は、被上告人らの被相続人D(以下「D」という。)から、昭和二六年ころ本件仮換地を賃借した、(2) 上告人A1は上告人A4から本件仮換地を転借した、(3) 右転貸にはDに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある、

(二) 上告人A2、同A3及び同A5は、上告人A1が本件仮換地上に所有している前記目録(二)及び(四)の各建物の一部を賃借し、その各敷地部分を占有しているものである、

(三) 本件仮換地は、そのままの位置関係で換地処分がされ、昭和五四年一月六日に本件換地となつたものであるが、前記Dと上告人A4の本件仮換地賃貸借及び上告人A4と上告人A1の本件仮換地転貸借に際しては、本件仮換地がそのまま本換地となつた場合はこれを賃貸借ないし転貸借する旨の合意が成立していたとの趣旨の主張をしていたものと認められる。

しかるに、原判決は、右(一)(1)の賃貸借が昭和三〇年一二月一四日に合意解除されたことを認定しているが、前示の観点に立つて右抗弁の当否について審理判断することなく、被上告人らの前記の本訴各請求を認容した第一審判決を相当として、右各上告人の控訴を棄却しているから、原判決には判決に影響を及ぼすべき事項についての判断遺脱、理由不備の違法があるものというべきである。

論旨は理由があり、原判決中右請求に係る部分は破棄を免れない。そして、右部分については上述の点につき更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。