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民事執行法九〇条六項にいう執行裁判所に対する配当異議の訴えを提起したことの証明

平成6年12月6日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
民事執行法九〇条六項にいう執行裁判所に対する配当異議の訴えを提起したことの証明は、配当異議の届出をした者が、自らの責任において、法定の期間内に右訴えを提起したことを執行裁判所に対してすることが必要であり、その趣旨を明示することなく、別件訴訟のために提出する旨を述べて、右訴えを提起した旨の届出書を民事訟廷事務室に提出するのみでは足りない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/742/062742_hanrei.pdf

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、首肯するに足りる。

右事実関係によれば、上告人は、昭和六〇年三月一三日の配当期日において配当異議の申出をして、同月一九日に配当異議の訴えを提起し、同月二〇日に裁判所書記官から右配当異議の訴えについての訴状受理証明書(乙第一〇号証の二)の交付を受けたが、右訴状受理証明書を添付して配当異議の訴えを提起した旨の届出書(乙第一〇号証の一)を執行裁判所に対して提出したのは同月二二日であったというのである。

そうであれば、上告人は配当期日から一週間以内に執行裁判所に対し配当異議の訴えを提起したことの証明をしなかったのであるから、執行裁判所が配当表に従ってDに対する配当を実施したことについて違法はない。

これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
 なお、論旨中には、上告人が、昭和六〇年三月二〇日、仙台地方裁判所の民事訟廷事務室において、配当異議の訴えを提起した旨の届出書(乙第六号証)を提出したことをもって、前記の証明をしたものというべきであると主張するかにみえる部分があるので検討するに、民事執行法九〇条六項が配当期日から一週間以内に執行裁判所に対して配当異議の訴えを提起したことの証明をしないときは配当異議の申出を取り下げたものとみなす旨を規定しているのは、配当異議の早期の解決という手続の安定及び配当の迅速な実施という配当異議の関係者の利益保護を図ることを目的としているのであるから、いやしくも配当異議の申出をした者は、自らの責任において、執行裁判所に対して法定の期間内に配当異議の訴えを提起したことを証明することが必要であり、その趣旨を明示することなく単に右届出書を民事訟廷事務室に提出するのみでは足りないと解すべきである。

ところで、原審の認定するところによれば、上告人は、昭和六〇年三月二〇日に仙台地方裁判所の民事訟廷事務室において前記の届出書を提出するに際し、仙台地方裁判所に当時係属していた上告人を原告としDを被告とする債務不存在確認請求事件のために提出する旨を述べ、何ら執行裁判所に対して提出する旨の言及はしなかったというのであるから、これをもってしてはいまだ民事執行法九〇条六項所定の証明をしたとするに足りないものというほかはない。

これと同旨の原審の判断は相当であり、原判決に所論の違法はない。 

 

The proof of having filed a lawsuit for the objection to distribution as referred to in Article 90, Paragraph 6 of the Civil Execution Act requires that the person who filed the objection to distribution must prove to the executing court, on their own responsibility, that they have filed the lawsuit within the statutory period. It is not sufficient to merely submit a notice of the filing of the lawsuit to the civil litigation office without clearly stating the purpose, and merely mentioning that it is for another lawsuit.