最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-04-24から1日間の記事一覧

国が、津波による原子力発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)40条に基づく規制権限を行使しなかったことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例

令和4年6月17日最高裁判所第二小法廷判決 注:結果回避可能性がないから予見可能性の有無にかかわらず,因果関係がないという判決です。 裁判要旨 電力会社が設置し運営する原子力発電所の原子炉に係る建屋の敷地に地震に伴う津波が到来し、上記建屋の中に海…

 刑法36条1項にいう「急迫不正の侵害」が終了していないとされた事例   全体として過剰防衛に当たるとされた事例

平成9年6月16日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 一 文化住宅の二階便所にいた被告人を鉄パイプで殴打した上逃げ出した後を追い掛けて殴り掛かろうとしていた相手方を、被告人が二階通路から外側の道路上に転落させる行為に及んだ当時、相手方において、勢…

刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律45条1項所定の保有個人情報に当たらない。

令和3年6月15日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律45条1項所定の保有個人情報に当たらない。(補足意見がある。) https://www.co…

地方公共団体の職員が暴行等を理由とする懲戒処分の停職期間中に同僚等に対して行った同処分に関する働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例

令和4年6月14日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 地方公共団体の職員が、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分の停職期間中に、上記暴行等の一部についての事情を知っていた同僚及び上記暴行の被害者の1人である部下に対して行った…

被疑者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関が接見の日時を翌日に指定した措置が国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たるとされた事例

平成12年6月13日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査…

曲線での速度超過により列車が脱線転覆し多数の乗客が死傷した鉄道事故について,鉄道会社の歴代社長らに業務上過失致死傷罪が成立しないとされた事例

平成29年6月12日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 快速列車の運転士が制限速度を大幅に超過し,転覆限界速度をも超える速度で同列車を曲線(本件曲線)に進入させたことにより同列車が脱線転覆し,多数の乗客が死傷した鉄道事故について,同事故以前の法令…

遺産分割協議と詐害行為取消権

平成11年6月11日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる。 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52217 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/217/052217_hanre…

有限会社の取締役が会社の破産宣告後にした放火による建物の焼失が火災保険約款の免責条項所定の「取締役」の故意による事故招致に当たるとされた事例

平成16年6月10日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 有限会社の取締役は,会社が破産宣告を受けた後であっても,火災保険の保険契約者又は被保険者の取締役の故意等によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の約款中の免責条項にいう「取締役」…

他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間

令和4年6月9日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合、非占有者に対する公訴時効の期間は、刑法252条1項の横領罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号)で…

他人の肖像,氏名等を含む商標について商標登録を受けるために必要な当該他人の承諾の有無を判断する基準時

平成16年6月8日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 他人の肖像又は他人の氏名,名称,その著名な略称等を含む商標について商標登録を受けるために必要な当該他人の承諾の有無を判断する基準時は,商標登録査定又は拒絶査定の時(拒絶査定に対する審判が請求…