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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

民法750条及び戸籍法74条1号と憲法24条

令和3年6月23日最高裁判所大法廷決定

裁判要旨    
民法750条及び戸籍法74条1号は,憲法24条に違反しない。
(補足意見,意見及び反対意見がある。)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90412

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/412/090412_hanrei.pdf

1 本件は,抗告人らが,婚姻届に「夫は夫の氏,妻は妻の氏を称する」旨を記載して婚姻の届出をしたところ,国分寺市長からこれを不受理とする処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件処分が不当であるとして,戸籍法122条に基づき,同市長に上記届出の受理を命ずることを申し立てた事案である。

本件処分は,上記届出が,夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称するとする民法750条の規定及び婚姻をしようとする者が婚姻届に記載しなければならない事項として夫婦が称する氏を掲げる戸籍法74条1号の規定(以下「本件各規定」という。)に違反することを理由とするものであった。

所論は,本件各規定が憲法14条1項,24条,98条2項に違反して無効であるなどというものである。

2 しかしながら,民法750条の規定が憲法24条に違反するものでないことは,当裁判所の判例とするところであり(最高裁平成27年12月16日大法廷判決(以下「平成27年大法廷判決」という。)),上記規定を受けて夫婦が称する氏を婚姻届の必要的記載事項と定めた戸籍法74条1号の規定もまた憲法24条に違反するものでないことは,平成27年大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。平成27年大法廷判決以降にみられる女性の有業率の上昇,管理職に占める女性の割合の増加その他の社会の変化や,いわゆる選択的夫婦別氏制の導入に賛成する者の割合の増加その他の国民の意識の変化といった原決定が認定する諸事情等を踏まえても,平成27年大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められない。憲法24条違反をいう論旨は,採用することができない。
なお,夫婦の氏についてどのような制度を採るのが立法政策として相当かという問題と,夫婦同氏制を定める現行法の規定が憲法24条に違反して無効であるか否かという憲法適合性の審査の問題とは,次元を異にするものである。本件処分の時点において本件各規定が憲法24条に違反して無効であるといえないことは上記のとおりであって,この種の制度の在り方は,平成27年大法廷判決の指摘するとおり,国会で論ぜられ,判断されるべき事柄にほかならないというべきである。

3 その余の論旨は,違憲をいうが,その実質は単なる法令違反を主張するもの又はその前提を欠くものであって,特別抗告の事由に該当しない。 

 

民法

(夫婦の氏)
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

戸籍法

第七十四条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項