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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

 公正証書による遺言が口授の要件を欠くものとはいえないとされた事例

昭和54年7月5日最高裁判所第一小法廷判決

裁判要旨    
公証人が予め他人作成のメモにより公正証書作成の準備として筆記したものに基づいて遺言者の陳述を聞き、右筆記を原本として公正証書を作成した場合であつても、原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、右公正証書による遺言は口授の要件を欠くものということはできない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/237/062237_hanrei.pdf

 

 主    文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。
 理    由
 上告代理人の上告理由について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができる。右事実関係のもとにおいては、本件遺言公正証書によるDの遺言は無効とはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例大審院大正六年(れ)第三六六三号同七年三月九日判決・刑録二四輯一九七頁)は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、いずれも採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    戸   田       弘
            裁判官    中   村   治   朗