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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

 不動産売買仲介の依頼が合意解除された場合における不動産取引仲介業者の報酬請求権。

 昭和39年7月16日最高裁判所第一小法廷判決

裁判要旨    
不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係がなく、右解除も故意に右業者を除外する目的でなされたものでなく、かつ、右依頼に関して報酬金の特約もなかつたときに、右業者が報酬金を請求できるという一般取引観念が存するものとは認められない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/747/053747_hanrei.pdf

・・・・・

同第三点について。

原判決は本件売買契約が被上告人らの上告人らに対する仲介依頼の正当に解除された後、直接取引により成立したものであることを認定し、上告人らに於て右売買の端緒を与えたとしても、その程度の斡旋行為ではまだ本人間の直接取引による本件売買契約成立について因果関係が存するとはいえない旨を判示しているのであって、その認定する右事実関係の下に於ては右判断は正当であり、原判決には所論違法の点は認められない。

所論はひっきょう独自の見解に立って原判決を非難するものであって、採用できない。

 同第四点について。

原判決は本件仲介依頼の解除は被上告人らに於て故意に上告人らを除外する目的でなされたものでなく、また前記第三点について説示したような経緯によって判示の如き当事者間直接の売買契約が成立し、右仲介依頼に関しては報酬金についての特約がなかった旨を認定しており、その認定は原判決挙示の証拠により首肯できないことはない。

そして、かかる事実関係の下においては仲介人たる上告人らが報酬金を請求しうる社会の一般取引観念を認め得ないとした原判決の判断は、肯認できないことはなく、所論経験則違反の違法は認められず、従って所論信義則違反の主張を容認しなかったからといって、原判決には理由不備又は理由そごの違法はない。

所論は、ひっきょう原審の認定にそわない事実を前提として原審の適法にした事実認定を非難するか、または独自の見解に立って原判決を非難するに帰し、採るを得ない。