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共有物分割請求訴訟

昭和46年6月18日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
一、民法二五八条一項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をすることができない場合を含むものであつて、現実に協議をしたうえで不調に終わつた場合に限られるものではない。

二、不動産の共有物分割訴訟においては、共有者間に持分の譲渡があつても、その登記が存しないため、譲受人が持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができないときは、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割を命ずべきである。

三、民法二五八条二項にいう「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ」とは、現物分割が物理的に不可能な場合のみを指称するのではなく、社会通念土適正な現物分割が著るしく困難な場合をも包含するものと解すべきである。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52034

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/034/052034_hanrei.pdf

民法二五八条一項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をなしえない場合を含むものであつて、必ずしも所論のように現実に協議をした上で不調に終つた場合に限られるものではない(大審院昭和一三年四月三〇日判決)。原審の確定した事実によれば、被上告人Bにおいて本件共有不動産の分割協議に応ずる意思がなく、そのため共有者全員の間に右分割の協議をなしえなかつたというのであるから、本件共有物分割請求を適法であるとした原審の判断は正当として首肯することができる。また、本件土地および建物の状況、共有者の数およびその持分の割合等原審の確定した事実関係のもとにおいては、本件不動産を現物をもつて適正に分割することは著るしく困難であるというべきである。

そして、民法二五八条二項にいう「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ」とは、現物分割が物理的に不可能な場合のみを指称するのではなく、社会通念上適正な現物分割が著るしく困難な場合をも包含するものと解すべきであるから、原審がいわゆる代金分割の方法による分割を命じたのは正当というべきである。所論の原判示は、右と同旨の見解に基づくものと解しえられるのであるから、論旨は理由がない。原判決に所論の違法はなく、論旨はすべて採用することができない。
同三について。
不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法一七七条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができない。

そして、共有物分割の訴は、共有者間の権利関係をその全員について画一的に創設する訴であるから、持分譲渡があつても、これをもつて他の共有者に対抗できないときには、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割をなすべきものである(大審院大正五年一二月二七日判決)。右と同旨の見解の下に、本件不動産の共有物分割を命じた原判決は、正当として首肯することができる。