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出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があった後にする補正が特許法六四条一項ただし書の要件を具備するか否かを判断する際に基準となるべき明細書又は図面

平成3年9月17日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があった後にする補正が特許法六四条一項ただし書の要件を具備するか否かは、当該補正の時点における明細書又は図面を基準として判断されるべきである。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63007

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/007/063007_hanrei.pdf

特許法六四条は、出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があった後に願書に添付した明細書又は図面について補正することができる場合及びその要件を定めた規定であるが、同条一項にいう「願書に添附した明細書又は図面」とは、右決定謄本送達後の当該補正の時点における明細書又は図面と解すべきであって、右補正が同項ただし書の要件を具備するか否かも、その時点における明細書及び図面の記載を基準として判断されるべきものである。
 これを本件についてみるのに、上告人の本件補正の時点における明細書及び図面は、出願時のそれとは異なる出願公告時のものであるところ、原審は、右出願公告時の明細書及び図面の記載を基準として同項ただし書の要件の存否を判断した上で、上告人の本件補正を却下した審査官の決定に誤りはないとし、本願発明の要旨を出願公告時の明細書の特許請求の範囲の記載を基礎として認定した。原審の右認定判断は、正当である。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。 

特許法

(出願公開)
第64条 特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第1項に規定する出願公開の請求があったときも、同様とする。
2 出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。ただし、第四号から第六号までに掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。
  一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
  二 特許出願の番号及び年月日
  三 発明者の氏名及び住所又は居所
  四 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
  五 願書に添付した要約書に記載した事項
  六 外国語書面出願にあっては、外国語書面及び外国語要約書面に記載した事項
  七 出願公開の番号及び年月日
  八 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
3 特許庁長官は、願書に添付した要約書の記載が第36条第7項の規定に適合しないときその他必要があると認めるときは、前項第五号の要約書に記載した事項に代えて、自ら作成した事項を特許公報に掲載することができる。