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賞与の支給日前に退職した者が当該賞与の受給権を有しないとされた事例

昭和57年10月7日最高裁判所第一小法廷判決

裁判要旨    
就業規則の「賞与は決算期毎の業績により各決算期につき一回支給する。」との定めが「賞与は決算期毎の業績により支給日に在籍している者に対し各決算期につき一回支給する。」と改訂された場合において、右改訂前から、年二回の決算期の中間時点を支給日と定めて当該支給日に在籍している者に対してのみ右決算期を対象とする賞与が支給されるという慣行が存在し、右就業規則の改訂は単に従業員組合の要請によつて右慣行を明文化したにとどまるものであつて、その内容においても合理性を有するときは、賞与の支給日前に退職した者は当該賞与の受給権を有しない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=70434

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/434/070434_hanrei.pdf

 

原審の適法に確定したところによれば、被上告銀行においては、本件就業規則三二条の改訂前から年二回の決算期の中間時点を支給日と定めて当該支給日に在籍している者に対してのみ右決算期間を対象とする賞与が支給されるという慣行が存在し、右規則三二条の改訂は単に被上告銀行の従業員組合の要請によつて右慣行を明文化したにとどまるものであつて、その内容においても合理性を有するというのであり、右事実関係のもとにおいては、上告人は、被上告銀行を退職したのちである昭和五四年六月一五日及び同年一二月一〇日を支給日とする各賞与については受給権を有しないとした原審の判断は、結局正当として是認することができる。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定しない事項を前提とし、若しくは原判決の結論に影響しない点について原判決を論難するものであつて、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。