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請求の基礎に変更のない請求原因変更の一事例

 昭和28年9月11日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
1 控訴審においても訴の変更は許される。
2 控訴審において訴の変更を許すことは、憲法32条に違反しない。
3 家屋明渡の請求原因として、当初所有権に基く不法占拠を予備的請求として期間満了による賃貸借の終了を主張し、その後これを全部撤回して借地権の無断譲渡を理由とする契約解除による賃貸借の終了を主張しても、右請求原因の変更は請求の基礎には変更がない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/143/056143_hanrei.pdf

論旨は控訴審においては訴の変更は許されないと主張する。

しかし控訴審には民訴三七八条によつて別段の定ある場合を除くの外第一審の手続が準用されており、訴の変更については控訴審において別段の規定がないから民訴二三二条の規定は控訴審にも準用があり従つて当事者は控訴審においても右二三二条の要件に合する限り訴の変更をなし得るものと解するを相当とする本件において被上告人は第一審において第一次の請求原因としては本件建物の所有権に基いて上告組合の不法占拠を理由とし、第二次の請求原因としては本件建物に関する被上告人と上告組合との賃貸借契約が期間の満了により終了したことを原因としていたところ、原審にいたつて従前の請求原因を全部撤回して新に上告組合が本件建物の賃借権を無断で上告人Aに譲渡したことを理由としての契約の解除を原因として主張するものである。

そして被上告人が本件建物の賃貸借契約の終了を原因としてその返還を求める点においては第一審と原審との間に何等変りはないのであるから、被上告人の右訴の変更は請求の基礎には変更がないものと認められるのである。又原審は右訴の変更により著しく訴訟手続を遅滞させるものではないと認めたのであるから原審が右訴の変更は適法であると判定したことは正当である。

また論旨は控訴審で訴の変更を許すことは憲法三二条に違反するものであると主張する。しかし控訴審で訴の変更を許すことが憲法三二条に違反しないことは昭和二三年(れ)第一八八号、同年七月八日大法廷判決の趣旨に照して明らかであるから論旨は採用できない。