最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

2023-06-04から1日間の記事一覧

借地上の建物の譲渡担保権者が建物の引渡しを受けて使用収益をする場合と民法612条にいう賃借権の譲渡又は転貸

平成9年7月17日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 借地上の建物につき借地人から譲渡担保権の設定を受けた者が、建物の引渡しを受けて使用又は収益をする場合には、いまだ譲渡担保権が実行されておらず、譲渡担保権設定者による受戻権の行使が可能であると…

 公判前整理手続を終了するに当たり確認された争点に明示的に掲げられなかった点につき,公判手続で争点として提示する措置をとることなく認定した第1審判決に違法はないとされた事例

平成26年4月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 殺害行為に先立つけん銃の引き金を引いたという行為につき,公判前整理手続を終了するに当たり確認された争点に明示的に掲げられなかったとしても,同手続で議論され,公判手続で実質的な攻撃防御を経てい…

別訴において一部請求をしている債権の残部を自働債権とする相殺の抗弁の許否

平成10年6月30日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起している場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上…

信用金庫の職員に預金の名目で小切手を詐取された者が信用金庫に損害賠償を請求した場合につき右の者に重大な過失があるとした判断に違法があるとされた事例

平成6年11月22日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 甲が信用金庫の支店長代理乙に預金の名目で小切手を詐取されたとして信用金庫に損害賠償を請求した場合において、甲は信用金庫の店舗内で乙に預金の趣旨で小切手を交付したが、もともと正規の預金を勧誘さ…

事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了しても賃貸人が信義則上その終了を再転借人に対抗することができないとされた事例

平成14年3月28日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 ビルの賃貸,管理を業とする会社を賃借人とする事業用ビル1棟の賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において,賃貸人が,賃借人にその知識,経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げ…

株主総会決議による委任を受けた取締役会が定めた新株予約権の行使条件をその発行後に変更する取締役会決議の効力

平成24年4月24日最高裁判所第三小法廷判決 裁判要旨 1 取締役会が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合において,新株予約権の発行後に上記行使…

1 医師としての知識,経験に基づく診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた医師がその過程で知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らす行為と秘密漏示罪の成否 2医師が医師としての知識,経験に基づく診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた場合の刑法134条1項の「人の秘密」の範囲

平成24年2月13日最高裁判所第二小法廷決定 裁判要旨 1 医師としての知識,経験に基づく診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた医師が,当該鑑定を行う過程で知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らす行為は,医師がその業務上取り扱ったことにつ…

保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件

平成28年10月25日最高裁判所第一小法廷決定 判示事項 公訴提起後第1回公判期日前に弁護人が申請した保釈請求に対する検察官の意見書の謄写を許可しなかった裁判官の処分が是認できないとされた事例 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/223/08622…

 医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)7条に基づく病院の開設許可の取消訴訟と同病院の開設地の付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人等の原告適格

平成19年10月19日最高裁判所第二小法廷判決 裁判要旨 医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)7条に基づく病院の開設許可の取消訴訟につき,同病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人,社会福祉法人及び…

刑法96条の2にいう「強制執行」と民事執行法1条所定の「担保権の実行としての競売」

平成21年7月14日最高裁判所第一小法廷決定 裁判要旨 刑法96条の2にいう「強制執行」には,民事執行法1条所定の「担保権の実行としての競売」が含まれる。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/841/037841_hanrei.pdf 主 文本件上告を棄却する…

市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為と抗告訴訟の対象  市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を「子」と記載した行為に国家賠償法1条1項にいう違法がないとされた事例

平成11年1月21日最高裁判所第一小法廷判決 裁判要旨 1 市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を「子」と記載した行為は、住民基本台帳の記載方法等に…