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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

控訴期間の不遵守が控訴代理人の責に帰すべからざる事由によるかどうかにつき職権調査を尽くさなかつたことが違法とされた事例

昭和55年10月28日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
 昭和53年12月15日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年12月26日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同54年1月1日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、民訴法一五九条一項所定の追完事由の存否について十分な職権調査を尽くすことなく、控訴期間を徒過した不適法な控訴であるとしてこれを却下することは違法である。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/320/064320_hanrei.pdf

原審が、上告人の訴訟代理人のした控訴は控訴期間を徒過した不適法なものとして、これを却下したことは所論のとおりである。
 記録によれば、上告人の第一審訴訟代理人は、昭和五三年一二月一五日第一審判決正本の送達を受け、上告人からの控訴提起の委任に基づき、同年一二月二六日本件控訴状を書留速達郵便物として長崎市長崎桜町郵便局に差し出したにもかかわらず、右郵便物が控訴期間経過後の昭和五四年一月一日に原審に配達されたことを認めることができる。

このような事実関係のもとにおいては、右期間不遵守が年末年始における郵便業務の渋滞しがちな特殊事情等から生じたとしても、本件控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、本件控訴については、民訴法一五九条一項所定の追完事由のあることを認め、その追完を許したうえでこれを適法な控訴の申立として取り扱う余地があつたものというべきである。

そうであるとすると、原審が、右追完の事由の存否について十分な職権調査を尽くすことなく、法定の控訴期間を経過したことにつき上告人の責に帰すべからざる事由の存したことをうかがい知る資料がないことを理由に本件控訴を不適法として却下したことは、右の点につき審理を尽くさない結果理由不備の違法を犯したものといわざるをえない。

(なお、一二月二九日、三〇日、三一日が民訴法一五六条二項にいう一般の休日に該当しないと解すべきことは、当裁判所の判例最高裁昭和四三年一月三〇日第三小法廷決定、同昭和四三年四月二六日第二小法廷判決、同昭和四三年九月二六日第一小法廷判決の示すところである。)
したがつて、論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、本件は、更に審理を尽くさせるのが相当であるから、これを原審に差し戻すこととする。