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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

第三者の一審における訴訟行為につき二審で追認があったものとされた事例

平成2年12月4日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
一審で第三者が被告の氏名を冒用して訴訟行為をした場合でも、被告本人が自ら控訴を申し立て、その選任した訴訟代理人が異議をとどめずに本案について弁論をし、判決を受けたときは、一審での第三者の訴訟行為は追認されたものと解すべきである。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/670/062670_hanrei.pdf

 上告人の長男であるDが、上告人の代理人として被上告人らとの間で本件各売買契約を締結するにつき、上告人から代理権を授与されていたものとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして、正当として是認することができ、原判決に所論釈明権不行使、審理不尽、理由不備の違法はない。
 また、所論は、第一審の訴訟手続に一郎が上告人の氏名を冒用して訴訟行為をした瑕疵があるとして、これを維持した原判決の違法をいうが、記録に照らせば、上告人は、第一審判決に対して自ら控訴を申し立て、その選任した訴訟代理人が本案について弁論をして訴訟を遂行し、原判決を受けていることが明らかである。原審における上告人らの右行為は、一郎の第一審における訴訟行為に所論の瑕疵があったとしても、これを追認したものに外ならないと解されるから、右瑕疵は、原審において補正されたものというべく、原判決に所論の違法はない。
 論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って若しくは原判決の結論に影響を及ぼさない部分について原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。