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 警視庁A警察署地域課に勤務する警察官が同庁B警察署刑事課で捜査中の事件に関して告発状を提出していた者から現金の供与を受けた行為につき収賄罪が成立するとされた事例

平成17年3月11日最高裁判所第一小法廷決定

裁判要旨    
警視庁A警察署地域課に勤務する警察官が,同庁B警察署刑事課で捜査中の事件に関して,告発状を提出していた者から,告発状の検討,助言,捜査情報の提供,捜査関係者への働き掛けなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,現金の供与を受けたときは,同警察官が同事件の捜査に関与していなかったとしても,刑法197条1項前段の収賄罪が成立する。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/065/050065_hanrei.pdf

所論にかんがみ,第1審判決判示第2の1の事実について,職権で判断する。
原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,警視庁警部補として同庁調布警察署地域課に勤務し,犯罪の捜査等の職務に従事していたものであるが,公正証書原本不実記載等の事件につき同庁多摩中央警察署長に対し告発状を提出していた者から,同事件について,告発状の検討,助言,捜査情報の提供,捜査関係者への働き掛けなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,現金の供与を受けたというのである。

【要旨】警察法64条等の関係法令によれば,同庁警察官の犯罪捜査に関する職務権限は,同庁の管轄区域である東京都の全域に及ぶと解されることなどに照らすと,被告人が,調布警察署管内の交番に勤務しており,多摩中央警察署刑事課の担当する上記事件の捜査に関与していなかったとしても,被告人の上記行為は,その職務に関し賄賂を収受したものであるというべきである。したがって,被告人につき刑法197条1項前段の収賄罪の成立を認めた原判断は,正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。