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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

 判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由に上告裁判所が原判決を破棄する場合における口頭弁論の要否

 平成19年1月16日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
上告裁判所は,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由として原判決を破棄する場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/001/034001_hanrei.pdf

 

 主文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理 由
職権をもって調査すると,記録によれば,原判決には,その基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることが明らかである。

そうすると,原判決は,民訴法249条1項に違反し,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官によってされたものであり,同法312条2項1号に規定する事由が存在する。

したがって,上告理由について判断をするまでもなく,原判決を破棄し,本件を原審に差し戻すのが相当である。

なお,民訴法319条及び140条(同法313条及び297条により上告審に準用)の規定の趣旨に照らせば,上告裁判所は,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由として原判決を破棄し,事件を原審に差し戻す旨の判決をする場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しないと解するのが相当である。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。