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根保証契約の主たる債務の範囲に含まれる債務に係る債権の譲渡が元本確定期日前にされた場合に譲受人が保証債務の履行を求めることの可否

平成24年12月14日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
根保証契約の主たる債務の範囲に含まれる債務に係る債権を譲り受けた者は,その譲渡が当該根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合であっても,当該根保証契約の当事者間において上記債権の譲受人の請求を妨げるような別段の合意がない限り,保証人に対し,保証債務の履行を求めることができる。
(補足意見がある。)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=82820

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/820/082820_hanrei.pdf

 1 本件は,根保証契約の主たる債務の範囲に含まれる債務に係る債権(「被保証債権」)を当該根保証契約に定める元本確定期日前に譲り受けた被上告人が,保証人である上告人に対し,保証債務の履行を求める事案である。

 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

 (1) 株式会社Aは,平成19年6月29日,有限会社Bに対し,弁済期を平成20年6月5日として8億円を貸し付けた。

 (2) 上告人は,平成19年6月29日,Aに対し,Aを貸主とし,Bを借主とする金銭消費貸借契約取引等により生ずるBの債務(上記(1)の貸付けに係るものを含む。)を主たる債務とし,極度額を48億3000万円,保証期間を平成19年6月29日から5年間とする連帯保証をした(「本件根保証契約」)。

 (3) Aは,平成20年8月25日,Bに対し,弁済期を平成21年8月5日として7億円を貸し付けた。

 (4) Aは,平成20年8月25日,Bに対し,弁済期を平成21年8月5日として9990万円を貸し付けた。

 (5) Aは,平成20年9月26日,上記(3)及び(4)の各貸付けに係る債権を株式会社Cに譲渡し,Cは,同日,当該各債権を被上告人に譲渡した。

 3 原審は,被保証債権が譲渡された場合には,その譲渡が根保証契約に定める元本確定期日前であっても,保証人に対する保証債権もこれに随伴して移転するとして,被上告人の請求を認容すべきものとした。

 4 所論は,被保証債権の譲渡が根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合には,当該被保証債権の譲受人が保証人に対し,保証債務の履行を求めることはできないと解すべきであるというものである。

 5 根保証契約を締結した当事者は,通常,主たる債務の範囲に含まれる個別の債務が発生すれば保証人がこれをその都度保証し,当該債務の弁済期が到来すれば,当該根保証契約に定める元本確定期日(本件根保証契約のように,保証期間の定めがある場合には,保証期間の満了日の翌日を元本確定期日とする定めをしたものと解することができる。)前であっても,保証人に対してその保証債務の履行を求めることができるものとして契約を締結し,被保証債権が譲渡された場合には保証債権もこれに随伴して移転することを前提としているものと解するのが合理的である。そうすると,被保証債権を譲り受けた者は,その譲渡が当該根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合であっても,当該根保証契約の当事者間において被保証債権の譲受人の請求を妨げるような別段の合意がない限り,保証人に対し,保証債務の履行を求めることができるというべきである。
 本件根保証契約の当事者間においては上記別段の合意があることはうかがわれないから,被上告人は,上告人に対し,保証債務の履行を求めることができる。

 6 これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。