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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

捜査機関への申告内容に虚偽が含まれていた事案につき刑法42条1項の自首が成立するとされた事例

 平成13年2月9日最高裁判所第三小法廷決定

裁判要旨    
けん銃を適合実包と共に携帯して所持し発射した者が,捜査機関に発覚する前に,これらの犯行に及んだことを捜査機関に申告した場合は,その際,使用したけん銃について虚偽の事実を述べるなどしたとしても,刑法42条1項の自首が成立する。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/015/050015_hanrei.pdf

所論にかんがみ,職権で判断すると,1,2審判決の認定によれば,被告人は,けん銃1丁を適合実包と共に携帯して所持し(銃砲刀剣類所持等取締法3条1項,31条の3第1項,2項),そのけん銃を用い対立する暴力団組事務所に向けて銃弾4発を発射した(平成11年法律第160号による改正前の銃砲刀剣類所持等取締法3条の13,銃砲刀剣類所持等取締法31条)上,被告人が犯人であることが捜査機関に発覚する前に,警察署に出頭し,警察官に対し前記事務所に自ら発砲した旨述べたが,その際,これらの犯行に使用したものとは異なるけん銃に発射を装う偽装工作を施して持参し,そのけん銃を使用したと虚偽の供述をしたものである。

以上によれば,【要旨】被告人は,前記各犯行について,捜査機関に発覚する前に自己の犯罪事実を捜査機関に申告したのであるから,その際に使用したけん銃について虚偽の事実を述べるなどしたことが認められるとしても,刑法42条1項の自首の成立を妨げるものではなく,その成立を否定した原判決の判断は,同条項の解釈を誤ったものといわなければならない。

しかし,記録に徴すると,被告人に対し前記両罪について自首を理由に刑の減軽をすることが相当とは認められないから,その法令違反は判決に影響を及ぼさないというべきである。