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準起訴手続によつて審判に付された事件において刑訴法二六二条一項に掲げる罪以外の罪で処罰することの可否

昭和49年4月1日最高裁判所第二小法廷決定

裁判要旨    
準起訴裁判所が、相当な嫌疑のもとに刑訴法二六二条一項に掲げる罪が成立すると判断し公訴提起すべきものとして審判に付した以上、公判審理の結果それ以外の罪の成立が認められるにすぎないことになつたとしても、審判に付された事件と公訴事実の同一性が認められるかぎり、この罪で処罰することができる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/043/051043_hanrei.pdf

所論は、原判決には準起訴手続によつて審判に付された事件において準起訴事件以外の事実を認定し有罪とした違法があるというものであるが、準起訴裁判所が、相当な嫌疑のもとに刑訴法二六二条一項に掲げる罪が成立すると判断し公訴提起すべきものとして審判に付した以上、その後の審理の結果それ以外の罪の成立が認められるにすぎないことになつたとしても、これが審判に付された事件と公訴事実の同一性が認められるかぎり、この事実を認定し処断することが許されないわけではない。

なぜならば、準起訴裁判の制度は、同法二六二条一項に掲げる罪が成立する相当な嫌疑があり起訴すべき場合であると認められるのにかかわらず、検察官が公訴を提起しないことの是正を目的とするものであるから、準起訴裁判所が、相当な嫌疑のもとに右の罪が成立すると判断し起訴すべき場合であるとして審判に付した以上、検察官の公訴提起と同じく、その後の訴因の変更、事実認定等について差異がないと解すべきであるからである。