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同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合における差押債権者と債権譲受人との間の優劣

 平成5年3月30日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
一 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合、差押債権者と債権譲受人とは、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することができない。
二 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明であるため、第三債務者が債権額に相当する金員を供託した場合において、被差押債権額と譲受債権額との合計額が右供託金額を超過するときは、差押債権者と債権譲受人は、被差押債権額と譲受債権額に応じて供託金額を案分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得する。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/364/056364_hanrei.pdf

  上告理由第一点について

国税徴収法に基づく滞納処分としての債権の差押えをした者と同一債権の譲受人との間の優劣は、債権差押えの通知が第三債務者に送達された日時と確定日付のある債権譲渡の通知が当該第三債務者に到達した日時又は確定日付のある第三債務者の承諾の日時との先後によって決すべきである(最高裁昭和五八年一〇月四日第三小法廷判決)。

したがって、右各通知が第三債務者に到達したが、その到達の先後関係が不明であるために、その相互間の優劣関係を決することができない場合には、右各通知が同時に第三債務者に到達した場合と同様に、差押債権者と債権譲受人との間では、互いに相手方に対して自己が優先的地位にある債権者であると主張することが許されない関係に立つものというべきである(最高裁昭和五三年七月一八日第三小法廷判決)。

右と同旨の原審の判断は正当であって、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。 

 同第二点について

 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。

 1 上告人は、株式会社D(「債務者会社」)に対し、昭和六〇年九月二四日現在、二四四万五三〇四円の租税債権を有していた。

 2 債務者会社は、E協同組合(「第三債務者組合」)に対し、昭和六〇年九月二四日現在、運送代金支払請求権六二万円(以下「本件債権」という。)を有していた。

 3 香椎税務署職員は、昭和六〇年九月二四日、前記租税債権を徴収するため、国税徴収法四七条及び六二条の規定に基づいて本件債権全額を差し押さえ、右債権差押えの通知(以下「本件債権差押通知」という。)は、右同日、第三債務者組合(福岡市所在の本部)に送達された。

 4 他方、被上告人は、昭和六〇年九月一八日、債務者会社から本件債権を譲り受け、債務者会社は、第三債務者組合に対し、同月一九日の確定日付のある内容証明郵便をもって右債権譲渡の通知(以下「本件債権譲渡通知」という。)をし、右通知は、同月二四日、第三債務者組合(北九州市所在の営業所)に到達した。

 5 本件債権差押通知と本件債権譲渡通知の第三債務者組合への各到達時の先後関係は不明である。そこで、第三債務者組合は、右先後関係が不明であるために債権者を確知することができないことを理由として、昭和六一年六月一七日、本件債権額六二万円を供託(福岡法務局昭和六一年度金第一三一三号)した。

 6 そこで、上告人は、昭和六二年三月二三日、右供託金につき債務者会社が取得した供託金還付請求権を差し押さえた上、被上告人を相手方として、上告人が右供託金六二万円の還付請求権の取立権を有することの確認を求める本訴を提起した。

 二 原審は、右事実関係の下において、本件債権差押通知と本件債権譲渡通知の第三債務者組合への各到達時の先後関係が不明である場合には、差押債権者である上告人と債権譲受人である被上告人は、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することは許されず、共に、第三債務者組合に対し自己の債権の優先を主張し得る地位にはないから、上告人の本件供託金還付請求権の取立権確認請求は失当であると判断して、右請求をすべて棄却した。

 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 1 国税徴収法に基づく滞納処分としての債権差押えの通知と確定日付のある右債権譲渡の通知とが当該第三債務者に到達したが、その到達の先後関係が不明であるために、その相互間の優劣を決することができない場合には、右各通知は同時に第三債務者に到達したものとして取り扱うのが相当である。

 2 そして、右のように各通知の到達の先後関係が不明であるためにその相互間の優劣を決することができない場合であっても、それぞれの立場において取得した第三債務者に対する法的地位が変容を受けるわけではないから、国税の徴収職員は、国税徴収法六七条一項に基づき差し押さえた右債権の取立権を取得し、また、債権譲受人も、右債権差押えの存在にかかわらず、第三債務者に対して右債権の給付を求める訴えを提起し、勝訴判決を得ることができる(最高裁昭和五五年一月一一日第三小法廷判決)。しかし、このような場合には、前記のとおり、差押債権者と債権譲受人との間では、互いに相手方に対して自己が優先的地位にある債権者であると主張することが許されない関係に立つ。

 3 そして、滞納処分としての債権差押えの通知と確定日付のある右債権譲渡の通知の第三債務者への到達の先後関係が不明であるために、第三債務者が債権者を確知することができないことを原因として右債権額に相当する金員を供託した場合において、被差押債権額と譲受債権額との合計額が右供託金額を超過するときは、差押債権者と債権譲受人は、公平の原則に照らし、被差押債権額と譲受債権額に応じて供託金額を案分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得するものと解するのが相当である。

 4 これを本件についてみるのに、前記の事実関係によれば、本件債権差押通知と本件債権譲渡通知の第三債務者組合への到達の先後関係が不明であるために、第三債務者組合が本件債権額に相当する六二万円を供託し、被差押債権額(六二万円)と譲受債権額(六二万円)の合計額(一二四万円)は右供託金額を超過するから、差押債権者である上告人と債権譲受人である被上告人は、公平の原則に照らし、被差押債権額と譲受債権額に応じて供託金額を案分した額、すなわち各三一万円の右供託金還付請求権をそれぞれ分割取得するものというべきである。

 5 そうすると、右と異なる解釈の下に上告人の本訴請求をすべて棄却すべきものとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。

そして、前記説示に徴すれば、上告人の本訴請求は、上告人が福岡法務局昭和六一年度金第一三一三号の供託金六二万円のうち三一万円の還付請求権の取立権を有することの確認を求める限度で理由があるから右の限度でこれを認容し、その余は失当として棄却すべきものである。論旨は右の限度において理由がある。

 四 以上の次第で、上告人の本訴請求中、上告人が福岡法務局昭和六一年度金第一三一三号の供託金六二万円のうち三一万円の還付請求権の取立権を有することの確認請求を棄却した部分は破棄を免れず、右部分に関する上告人の本訴請求を認容した第一審判決はその限度で正当であるから、右部分について被上告人の控訴を棄却し、上告人のその余の上告を棄却することとする。