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養子縁組無効確認請求

昭和23年12月23日最高裁判所第一小法廷判決

裁判要旨    
一 旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は、効力を生じない。
二 養子関係の設定を欲する効果意思のないことによる養子縁組の無効は、絶対的のものであつて民法第九三条但書の適用をまつてはじめて無効となるのではない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57114

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/114/057114_hanrei.pdf

上告代理人の上告理由第一点について。 

 所論は、旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)に「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは「届出自体が当事者の意思に反する場合即ち届出其のものに瑕疵ある場合」を指すものであると主張する。しかし、それは当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものであると解すべきは、言をまたないところである。されば、たとい養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それは単に他の目的を達するための便法として仮託されたに過ぎずして、真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなかつた場合においては養子縁組は効力を生じないのである。これと同趣旨に出でた原判決には、所論のような違法はなく、論旨は、それ故に理由がない。

 同第二点について。
 真に養親子関係の設定を欲する効果意思がない場合においては、養子縁組は旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)によつて無効である。そして、この無効は絶対的なものであるから、所論のように原審が同第九三条但書を適用する必要もなく、又適用したものでもない。従つて、論旨は理由がない。

 同第三点について。
 所論指摘の各事実のみが、本件養子縁組を無効とする原判決の理由ではない。これらの事実と他の証拠を綜合して、原審は真に養親子関係の設定を欲する効果意思がないことを認定して養子縁組を無効としたものである。そして、原判決の挙げている証拠によればかかる事実の認定は、当裁判所においても肯認し得るところである。論旨は、結局原審の自由裁量権に属する証拠の取捨判断ないし事実認定に対する非難を加えるものであるから、上告適法の理由とはならない。