離婚無効確認等請求
昭和43年10月31日最高裁判所第一小法廷判決
裁判要旨
一、婚姻の継続中に、自己の意思に基づかないでほしいままに協議離婚届を偽造、行使され、真実に反する離婚の事実を戸籍に記載された者がこれによつて損害を生じたときは、不法行為が成立し、該行為者は被偽造者に対して損害賠償の義務を負担する。
二、離婚無効の訴は人事訴訟に属し、人事訴訟手続法の規定が準用され、その判決の効力は第三者に対しても及ぶものと解すべきである。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=66689
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/689/066689_hanrei.pdf
上告代理人の上告理由第一、二点について。
婚姻の継続中に、自己の意思に基づかないでほしいままに離婚届を偽造、行使され、真実に反する離婚の事実を戸籍に記載された者は、そのこと自体によつて自己の有する人格的自由を侵害されたものと解すべきであるから、これによつて損害を生じたときは不法行為が成立し、該行為者は右損害を賠償すべき義務を負うことは当然であつて、右偽造の離婚届によつて離婚が成立することがないからといつて、不法行為が成立しないと解すべきものではない。そして、原審の認定した事実関係のもとにおいては、上告人は、被上告人に対し慰藉料として一〇万円を支払うべき義務があるものとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の法律的見解に立ち、または原審の認定にそわない事実を主張して原判決の判断を非難するものにすぎず、採用するに足りない。
同第三点について。
離婚無効の訴は、人事訴訟に属するものとして人事訴訟手続法の規定が準用され、その判決の効力は第三者に対しても及ぶものと解すべきであつて(昭和一九年一〇月一三日大審院判決・民集二三巻五九八頁参照)、必ずしも戸籍訂正の目的でのみ提起されるものではないのであるから、戸籍を訂正するためには所論のような方途によることができるからといつて、ただちに、離婚無効確認の訴を提起する必要性が失われると解することはできない。また、記録に表われた本件訴訟の経過に照らせば、本件訴訟を調停に付さなかつたことをもつて不相当とは解しがたい。そして、原審の確定した事情のもとでは、被上告人が支払つた本件第一、二審における訴訟手数料は上告人の不法行為に由来する通常の財産的損害である旨の原審の判断は正当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用に値しない。