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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

上告棄却決定に対する異議申立て事件

 令和5年3月7日最高裁判所第一小法廷決定

判示事項    
被告人が弁護人に対し上告趣意書差出最終日前に被告人作成の上告趣意書を送付したが、弁護人が上告棄却決定後にこれを裁判所に提出したという事案につき、上告棄却決定に判断遺脱はないとされた事例

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/848/091848_hanrei.pdf

令和5年(す)第14号 強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
令和5年3月7日 第一小法廷決定

 主 文
 本件申立てを棄却する。
 理 由
所論は、被告人は弁護人を介して被告人本人作成の上告趣意書を提出したはずであり、原決定には被告人本人の上告趣意について判断遺脱がある旨主張する。
記録及び当審における事実取調べの結果によれば、本件について、上告趣意書差出最終日が令和4年12月7日と指定され、弁護人は、同年11月4日、弁護人作成の上告趣意書を当裁判所に提出したこと、被告人は、同月10日、収容先である大阪拘置所から、弁護人の事務所に宛てて、被告人本人作成の上告趣意書(以下「本件上告趣意書」という。)を封入した郵便物を発信し、同郵便物は、同月15日、弁護人の事務所に届いたこと、当裁判所は、令和5年1月5日、弁護人の上告趣意について、刑訴法405条の上告理由に当たらないとして、同法414条、386条1項3号により、上告棄却の決定をしたこと、弁護人は、同月10日、本件上告趣意書を当裁判所に提出したことが認められる。
以上の事実関係によれば、原決定に何ら判断遺脱がないことは明らかであり、所論は理由がない(なお、念のため本件上告趣意書を検討すると、その上告趣意は、事実誤認の主張であって、同法405条の上告理由に当たらない。)。
よって、本件申立ては理由がないので、同法414条、386条2項、385条2項、426条1項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。