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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

 1 共有者全員が提起した共有権確認訴訟と固有必要的共同訴訟   2 共有者全員が提起した共有権に基づく所有権移転登記手続請求訴訟と固有必要的共同訴訟

昭和46年10月7日最高裁判所第一小法廷判決

裁判要旨    
 1 一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、共有権(その数名が共同して有する一個の所有権)に基づき共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態は、固有必要的共同訴訟と解すべきである。
2 一個の不動産を共有する数名の者全員が、共同原告となり、共有権(その数名が共同して有する一個の所有権)に基づき所有権移転登記手続を求めているときは、その訴訟の形態は、固有必要的共同訴訟と解すべきである。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/900/051900_hanrei.pdf

本件記録によれば、被上告人らの本訴請求は、被上告人らが共同して本件土地を訴外Dから買い受けてその所有権を取得したが、都合により上告人名義に所有権移転登記を経由したもので、その登記は実体関係に合致しないものであるとの理由で、上告人に対し本件土地の共有権の確認および右登記の抹消登記手続に代えて所有権移転登記手続を求めるものであるところ、被上告人Bは、本件第一審係属中に本訴を取り下げる旨の昭和三七年九月一〇日付書面を提出し、上告人がその取下げに同意する旨の同月一一日付書面を提出していることが明らかである。

そして、原審は、被上告人Bのした右訴の取下げは無効であると判示しているところ、論旨は、要するに、被上告人らの提起した本件訴訟は、通常の共同訴訟であつて、被上告人Bの取下げによつて、同人と上告人との間の訴訟は終了したものというべく、原判決には民訴法六二条の解釈適用を誤つた違法があるというのである。
思うに、一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、いわゆる共有権(数人が共同して有する一個の所有権)に基づき、その共有権を争う第三者を相手方として、共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態はいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である(大審院大正一一年(オ)第八二一号同一三年五月一九日判決、民集三巻二一一頁参照)。けだし、この場合には、共有者全員の有する一個の所有権そのものが紛争の対象となつているのであつて、共有者全員が共同して訴訟追行権を有し、その紛争の解決いかんについては共有者全員が法律上利害関係を有するから、その判決による解決は全員に矛盾なくなされることが要請され、かつ、紛争の合理的解決をはかるべき訴訟制度のたてまえからするも、共有者全員につき合一に確定する必要があるというべきだからである。また、これと同様に、一個の不動産を共有する数名の者全員が、共同原告となつて、共有権に基づき所有権移転登記手続を求めているときは、その訴訟の形態も固有必要的共同訴訟と解するのが相当であり(大審院大正一一年(オ)第二五六号同年七月一〇日判決、民集一巻三八六頁参照)、その移転登記請求が真正な所有名義の回復の目的に出たものであつたとしても、その理は異ならない。

それゆえ、このような訴訟の係属中に共同原告の一人が訴の取下げをしても、その取下げは効力を生じないものというべきである。

これと同趣旨の原判決に所論の違法はなく、所論引用の判例は、いずれも本件と事案を異にして適切ではない。したがつて、論旨は採用することができない。