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登記官が不動産登記簿の表題部に所有者を記載する行為と抗告訴訟の対象

平成9年3月11日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
 登記官が不動産登記簿の表題部に所有者を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

(補足意見がある。)

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/048/063048_hanrei.pdf

原審の適法に確定した事実関係の下においては、被上告人が本件土地の登記簿の表題部の所有者欄の「a町bノcD外七名」という記載のうち「外七名」という部分の記載をしたことに違法はなく、したがって、被上告人が本件所有権保存登記申請及び更正登記申請を却下した処分にも違法はないとした原審の判断は、正当として是認することができる。

論旨は、独自の見解に立ち、又は原判決を正解しないでこれを論難するか、原判決の結論に影響しない点をとらえてその違法をいうものであって、採用することができない。

無効確認訴訟に関する部分並びに上告理由三について
登記官が不動産登記簿の表題部に所有者を記載する行為は、所有者と記載された特定の個人に不動産登記法一〇〇条一項一号に基づき所有権保存登記申請をすることができる地位を与えるという法的効果を有するから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。そして、上告人は、本件土地の登記簿の表題部の所有者欄に記載されたDの一般承継人であるというのであるから、右所有者欄の「外七名」という記載の無効確認を求める上告人の訴えは適法であって、これを不適法として却下した原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるものというべきである。

しかしながら、被上告人が右の「外七名」という記載をしたことに違法はないと解すべきであることは前記のとおりであるから、右無効確認請求は、理由がないことが明らかである。そうすると、右請求は棄却を免れないところであるが、不利益変更禁止の原則により、上告を棄却するにとどめるほかはなく、結局、原判決の右違法は、結論に影響を及ぼさないものというに帰する。