最高裁判例の勉強部屋:毎日数個の最高裁判例を読む

上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。併合罪の関係になる。

平成17年4月14日最高裁判所第一小法廷判決

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/078/050078_hanrei.pdf

弁護人の上告趣意は,判例違反の主張である。

そこで検討すると,所論引用の大審院大正15年10月14日判決は,人を恐喝して財物を交付させるため不法に監禁した場合において,監禁罪と恐喝未遂罪とが刑法54条1項後段所定の牽連犯の関係にあるとしたものと解される。

ところが,原判決は,被告人が共犯者らと共謀の上,被害者から風俗店の登録名義貸し料名下に金品を喝取しようと企て,被害者を監禁し,その際に被害者に対して加えた暴行により傷害を負わせ,さらに,これら監禁のための暴行等により畏怖している被害者を更に脅迫して現金及び自動車1台を喝取したという監禁致傷,恐喝の各罪について,これらを併合罪として処断した第1審判決を是認している。

してみると,原判決は,これら各罪が牽連犯となるとする上記大審院判例と相反する判断をしたものといわざるを得ない。

しかしながら,【要旨】恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められず,牽連犯の関係にはないと解するのが相当であるから,上記大審院判例はこれを変更し,原判決を維持すべきである。