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認知の届出が受理された当時認知者が意識を失つていた場合と認知の届出の効力

 昭和54年3月30日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
甲、乙間に血縁上の父子関係があり、甲が乙を認知する意思を有し、かつ、甲から他人に対し認知届出の委託がされていたときは、届出が受理された当時甲が意識を失つていたとしても、その届出の前に翻意したなど特段の事情のない限り、右届出の受理により認知は有効に成立する。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/241/064241_hanrei.pdf

 

民法七八一条一項所定の認知の届出にあたり、認知者が他人に認知届書の作成及び提出を委託した場合であつても、そのことの故に認知の有効な成立が妨げられるものではなく、また、血縁上の親子関係にある父が、子を認知する意思を有し、かつ、他人に対し認知の届出の委託をしていたときは、届出が受理された当時父が意識を失つていたとしても、その受理の前に翻意したなど特段の事情のない限り、右届出の受理により認知は有効に成立するものと解するのが相当である(最高裁昭和四五年一一月二四日第三小法廷判決)。

これと同旨に出た原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解又は原審の認定に沿わない事実に基づき原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。