当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの独立当事者参加の申出の適否
裁判要旨
1 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。
2 独立当事者参加の申出は,参加人が参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず,単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されない。
(2につき意見及び反対意見がある。)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/333/084333_hanrei.pdf
1 本件は,相手方Y1,同Y2及び同Y3(「相手方Y1ら」と総称)を原告とし,相手方Y4(以下「相手方会社」という。)を被告として提起された株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決につき,相手方会社の株主である抗告人が,上記訴えに係る訴訟の係属を知らされずその審理に関与する機会を奪われたから,上記確定判決につき民訴法338条1項3号の再審事由があるなどと主張して,上記訴訟について独立当事者参加の申出をするとともに,再審の訴えを提起した事案である。
2 原々審は,株式会社の解散は当該株式会社の株主に重大な影響を及ぼす事項であるから,株式会社の解散の訴えが提起される前から当該株式会社の株主である抗告人は,上記訴えに係る請求を認容する確定判決を取り消す固有の利益を有する第三者に当たり,上記確定判決につき再審の訴えの原告適格を有するというべきであると判断した上で,本件再審請求には理由がないとしてこれを棄却した。原審は,この原々決定を維持して,抗告人の抗告を棄却した。
3 そこで,職権により本件再審の訴えの適否について検討する。
新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる(最高裁平成25年11月21日第一小法廷決定)。この理は,新株発行の無効の訴えと同様にその請求を認容する確定判決が第三者に対してもその効力を有する株式会社の解散の訴えの場合においても異ならないというべきである。
そして,独立当事者参加の申出は,参加人が参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず,単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されないと解すべきである(最高裁昭和45年1月22日第一小法廷判決)。
これを本件についてみると,抗告人は,相手方Y1らと相手方会社との間の訴訟について独立当事者参加の申出をするとともに本件再審の訴えを提起したが,相手方Y1らの相手方会社に対する請求に対して請求棄却の判決を求めただけであって,相手方Y1ら又は相手方会社に対し何らの請求も提出していないことは記録上明らかである。
そうすると,抗告人の上記独立当事者参加の申出は不適法である。なお,記録によれば,再審訴状の「再審の理由」欄には,相手方会社との関係で解散の事由が存在しないことの確認を求める旨の記載があることが認められる。
しかし,仮に抗告人が上記独立当事者参加の申出につきこのような確認の請求を提出していたと解したとしても,このような事実の確認を求める訴えは確認の利益を欠くものというべきであって,上記独立当事者参加の申出が不適法であることに変わりはない。
したがって,抗告人が本件再審の訴えの原告適格を有しているということはできず,本件再審の訴えは不適法であるというべきである。
4 以上によれば,本件再審の訴えを適法なものであるとした原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原決定は破棄を免れない。
そして,以上に説示したところによれば,原々決定を取り消して,本件再審の訴えを却下すべきである。
よって,裁判官山浦善樹の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官金築誠志の意見がある。