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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

当事者参加訴訟の一審判決に対し原告が控訴した場合における他の二者間の請求と控訴審の審判

 昭和48年7月20日最高裁判所第二小法廷判決

裁判要旨    
原告甲の被告乙に対する請求ならびに参加人丙の甲および乙に対する各請求が合一にのみ確定すべき当事者参加訴訟において、甲の乙に対する請求を棄却し、丙の甲および乙に対する請求をそれぞれ一部認容する旨の一審判決に対し、甲が、その敗訴部分の取消、甲の乙に対する請求認容および丙の甲に対する請求中一審認容部分の棄却を求めて控訴したにとどまり、乙が控訴または附帯控訴をしない場合であつても、控訴審は合一確定に必要な限度で、一審判決中参加人丙の乙に対する請求を認容した部分を丙に不利に変更することができる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/962/051962_hanrei.pdf

 上告代理人の上告理由第一点について。
 所論は、要するに、上告人(参加人)A商事株式会社(「参加人」)と被上告人(被告)B1駅弁当株式会社(「被告」)との間の訴訟は一審判決どおり確定しているのであつて、該請求が被上告人(原告)B2(「原告」)の控訴にもとづく控訴審における審判の対象にはならない、というのである。

しかし、本件は、訴訟の目的が原告、被告および参加人の三者間において合一にのみ確定すべき場合(民訴法七一条、六二条)に当たることが明らかであるから、一審判決中参加人の被告に対する請求を認容した部分は、原告のみの控訴によつても確定を遮断され、かつ、控訴審においては、被告の控訴または附帯控訴の有無にかかわらず、合一確定のため必要な限度で一審判決中前記部分を参加人に不利に変更することができると解するのが相当である最高裁昭和四二年九月二七日大法廷判決、最高裁昭和三六年三月一六日第一小法廷判決、最高裁昭和四三年四月一二日第二小法廷判決)。原判決に所論の違法はなく、所論は、これと異なる独自の見解にたつものであつて採用するをえない。

 同第二点ないし第六点について。
 所論に関する原審の事実認定は、原判決の挙示する証拠関係に照らし是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

 同第七点について。
 原審はDが代理人として所論の債権譲渡の承諾をしたものと認定しているものであることは、判文に徴して明らかであるところ、債権譲渡の承諾は、観念の通知であるが、意思表示に関する規定が類推適用されるべきであつて、代理に親しむと解するのが相当である(大審院昭和四年二月二三日判決)から、原判決に所論の違法はない。引用の判例は、本件に適切でなく、論旨は採用することができない。

 同第八点について。
 債権譲渡の承諾書が作成された後譲受人がその承諾書に確定日付を得た場合であつても、その確定日付の時から所定の対抗力を生じるものと解するのが相当である(大審院大正四年二月九日判決)。
これと同旨の原審判断は相当で、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。