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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

 和解調書に建物収去の条項がある場合と建物収去の訴の利益

 昭和42年11月30日最高裁判所第一小法廷判決

裁判要旨    
和解調書に建物を収去すべき旨の条項があつても、建物収去のための債務名義としてその内容に疑義があるときは、さらに建物収去の訴を提起する利益がある。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/308/056308_hanrei.pdf

 

 上告代理人の上告理由第一点について。
 訴訟上の和解の内容がいかなるものであるかは、和解調書の文言のみに拘束されず、一般法律行為の解釈の基準に従つて判定されるべきものであるところ、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が、賃貸期間終了後収去すべきものとされた建物は、本件建物および旧建物中残された台所部分を指すものであると認定判断したことは、右和解の文言およびその他挙示の証拠により是認でき、その間所論の違法は認められない。それ故、所論は採るを得ない。

 同第四点について。

本件和解条項における収去すべき建物の表示は抽象的であり、また、買取請求の条項もあるから、右和解は建物収去のための債務名義としてその内容は必ずしも明確でなく、疑義あるを免れない。

そして、債務名義の内容について疑義がある場合においては、さらに訴を提起する利益があるものと解すべきであるから、本件は訴の利益があるものというべきである。

原判決はかかる見解を前提として本案につき審理、判断をしているものと認められるから、原判決には所論判断遺脱の違法はない。所論は採るを得ない。