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上告理由を発見するためには常日頃から最高裁判例を読む習慣が有効:弁護士中山知行/富士市/TEL0545-50-9701

遺言の証人となることができない者が同席してされた公正証書遺言の効力

 平成13年3月27日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨    
遺言公正証書の作成に当たり当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても,この者によって遺言の内容が左右されたり,遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り,同遺言が無効となるものではない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/393/062393_hanrei.pdf

上告代理人兼上告補助参加代理人の上告理由一及び二について

所論の点に関する原審の事実認定は,原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り,上記事実関係の下においては,本件遺言当時,Dは意思能力を有しており,公証人はDが口授した遺言の内容を聞き取ったものであるとした原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するか,又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって,採用することができない。

 同三について

【要旨】遺言公正証書の作成に当たり,民法所定の証人が立ち会っている以上,たまたま当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても,この者によって遺言の内容が左右されたり,遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り,当該遺言公正証書の作成手続を違法ということはできず,同遺言が無効となるものではないと解するのが相当である。
 ところで,本件において,受遺者であるEの長女のFらが同席していたことによって,本件遺言の内容が左右されたり,Dが自己の真意に基づき遺言をすることが妨げられたりした事情を認めることができないとした原審の認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。
 したがって,本件公正証書による遺言は有効であるというべきであり,これと同旨の原審の判断は正当であって,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用するこ とができない。

 

In the creation of a notarized will, as long as witnesses stipulated by the civil law are present, even if someone who happens not to be eligible to be a witness to the will is also present, unless there are exceptional circumstances where the content of the will is influenced by this person, or the testator is hindered from making a will based on their true intention, it would not be appropriate to deem the process of creating the notarized will as illegal, and it should be understood that the will does not become invalid.